虎よ、虎よ!

『虎よ、虎よ!』の概要とあらすじ

アルフレッド・ベスターによる『虎よ、虎よ!』（原題：Tiger! Tiger!）は、1956年に発表されたSF小説であり、彼の長編作品の中でも特に高く評価されています。この作品は、アレクサンドル・デュマ・ペールの名作『モンテ・クリスト伯』から触発された壮大な復讐譚として知られており、SF文学のクラシックとして数多くの読者を魅了してきました。また、後のニュー・ウェーブSF作家たちに大きな影響を与えたことでも知られています。

発表の経緯

ベスターは、以前から自身が描きたい復讐物語のアイディアを持っていました。彼の構想に繋がったのは、フィリピンの船員の記事を読んだことでした。記事には、第二次世界大戦中の漂流事件が語られており、困難な状況の中で助けを求めた船員が無視される様子が描かれていました。この事件を作品に取り入れ、『虎よ、虎よ!』は1956年に最初イギリスで出版され、その後アメリカのSF雑誌で連載されました。

最初に発表されたときは多くの支持を得ることはできませんでしたが、1960年代に入り再評価が進み、結果としてベスターの作品の中でも最高傑作とされるようになりました。日本語訳は1958年に講談社から刊行され、その後も何度か改訂版が登場しています。

あらすじ

物語は、24世紀の未来、人類が精神感応移動能力、いわゆるテレポーテーションを手に入れた世界から始まります。この能力は生活様式を一変させ、内惑星連合と外衛星同盟との間には戦争が勃発します。25世紀に入ると、戦争は依然として続き、プレスタイン財閥の宇宙船「ノーマッド」は、火星と木星の間で攻撃を受け漂流してしまいます。

この船の唯一の生存者であるガリヴァー・フォイルは、170日以上にわたって孤独な環境で救助を待ち続けます。そして、171日目にプレスタイン財閥のV級輸送艇「ヴォーガ」が近くを通過するのを目にし救助信号を送信しますが、彼らはその信号を無視し、立ち去ってしまいます。この出来事がフォイルの心に絶望感と復讐心を植え付け、彼はかつての三等航海士から決意を持つ男へと生まれ変わるのです。

フォイルはノーマッドを修理し、サーガッソ小惑星群に住む科学人たちに救助されますが、彼らの科学は過去と異なり、奇怪な儀式や風習へと変化しています。彼はそこで恐ろしい運命に見舞われ、虎の模様の刺青を刻まれることになります。脱出後、フォイルは火星近くで内惑星連合の宇宙海軍に助けられ、故郷へと帰還します。

帰還後、フォイルはジョフリー・フォーマイルと名を変え、復讐の欲望を抱きながらプレスタイン財閥に近づく一方で、プレスタインは行方不明となったノーマッドの積荷を求めて彼を追っています。

SF的要素

この作品は、「ワイドスクリーン・バロック」と称されるスタイルに該当し、科学的アイディアや技術が豊富に盛り込まれています。ジョウント効果や加速装置の概念は、後にさまざまなメディアでも使用され、多くの作品に影響を及ぼしました。

映像化の試み

『虎よ、虎よ!』は過去に映像化の企画がありましたが、実現には至っていません。1968年には日本のアニメ制作会社エイケンがテレビアニメ化を企画し、試作されたパイロットフィルムも存在します。また、2004年にはゴンゾがアニメ化を計画しましたが、著作権の問題から実現しませんでした。いくつかの映画化計画も浮上しましたが、いずれも具体化には至っていない状態です。

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