虎尾達哉

虎尾 達哉（とらお たつや）氏は、1955年9月24日に生まれ、日本の歴史学者として活躍しています。特に日本古代史を専門とし、長年にわたり鹿児島大学で教鞭を執り、現在は同大学の名誉教授の称号を得ています。

氏の生家は青森県弘前市にあり、学術的な家庭環境で育ちました。父は同じく歴史学者の虎尾俊哉氏、祖父は俳人であり、かつて台南師範学校や旧制松山中学校で国語や漢文を教えていた虎尾文平氏です。

学歴を見ると、1974年に青森県立弘前高等学校を卒業後、京都大学文学部国史学専攻に進学し、1979年に卒業しました。その後、同大学院文学研究科博士課程へ進み、著名な歴史学者である岸俊男氏の指導を受けましたが、1983年に課程を中退しています。しかし、研究は継続され、1997年には論文「古代参議制の研究」によって京都大学から文学博士の学位を取得しました。

職歴の始まりは、大学院中退と同年の1983年、鹿児島大学法文学部助手として着任したことです。その後、1987年5月には助教授、1998年には教授へと昇任し、鹿児島大学において教育・研究活動に尽力しました。2021年に定年退職を迎えましたが、現在も鹿児島大学および鹿児島県立短期大学の非常勤講師、そして放送大学鹿児島学習センターの客員教員として、後進の指導や研究活動に携わっています。

虎尾氏の主要な研究テーマは、日本の古代、具体的には飛鳥時代から奈良・平安時代前期にかけての7世紀から9世紀における政治のあり方や、当時の官僚制度の実態に深く切り込むものです。律令制下で国家を支えた官僚たちの活動や、天皇を支える議政官である参議を中心とした政治構造などについて、詳細かつ実証的な研究を重ねてきました。これらの研究成果は、氏の多くの著作にまとめられています。

また、虎尾氏の研究は古代史にとどまらず、その射程は近代にも及んでいます。1999年6月から2000年4月にかけて、文部省の長期在外研究員としてイギリスに滞在し、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院（SOAS）で客員研究員を務めた経験は、氏の研究領域を広げる契機となりました。この滞在を機に、幕末から明治時代にかけて日本に滞在し、日本の文化、歴史、言語などを研究した先駆的な英国人学者たち、特にアーネスト・サトウやウイリアム・アストンといった人物に関する調査・研究を開始しました。これは、古代史の専門家としては比較的珍しいテーマであり、氏の幅広い学術的関心と探求心を示しています。

虎尾氏は精力的な執筆活動でも知られており、その研究成果は数多くの書籍として発表されています。

主な著作には以下のものがあります。

『日本古代の参議制』（吉川弘文館、1998年）
『律令官人社会の研究』（塙書房、2006年）
『藤原冬嗣』（吉川弘文館、人物叢書、2020年）
『律令政治と官人社会』（塙書房、2021年）
『古代日本の官僚 - 天皇に仕えた怠惰な面々』（中公新書、2021年）
『苦悩の覇者天武天皇　専制君主と下級官僚』（吉川弘文館、歴史文化ライブラリー、2024年）

これらの著作を通じて、古代日本の政治や社会の複雑さ、そしてそこに生きた人々の息吹を現代の読者に分かりやすく伝えています。虎尾達哉氏は、長年の研究と教育活動を通じて、日本古代史研究、特に政治史・官僚制研究において重要な足跡を残しており、その学術的な貢献は今後も評価され続けるでしょう。

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