虫明焼

虫明焼（むしあけやき）とは

虫明焼は、岡山県瀬戸内市の虫明地域で作られる伝統的な陶器です。その歴史は約300年に及び、岡山藩の藩士・伊木家が設立したとされますが、その正確な起源には数多くの説が存在します。

歴史の流れ

虫明焼は、最初に伊木家のお庭焼として始まりました。1833年前後、地元の陶工今吉吉蔵が播州竜野から陶工を招いて作陶を始めたことが記録に残っています。しかし、この窯では備前焼の模倣作品も作られ、伊部の窯元から訴えられたことで1842年には一時的に廃窯となってしまいます。

その後、1847年に伊木忠澄（号：三猿斎）が新たにお庭窯を開き、京風の名工たちを招くことによって薄作りの新しいスタイルを確立しました。だが、幕末の激動の時代に入ると忠澄の窯は経営困難に直面し、最終的に途絶えることになります。

その後の復興の試みもありましたが、成功には至りませんでした。特に1930年には、香洲の弟子である横山香宝が新たに築窯し、優れた作品を制作したことが重要です。さらに1932年には、有志が協力して岡本英山を招き、その結果、伝統的な茶陶に新しい要素を取り入れることに成功しました。これにより、虫明焼は魅力的な進化を遂げ、1988年には県指定の伝統的工芸品として認定されました。

製作技術と特徴

虫明焼の特徴的な点は、天然松灰を主成分とした自家精製の灰釉を用いていることです。この灰釉は、施釉の濃淡や焚き方によって優しい青色、赤色、黄色などに変化します。また、造形も薄作りであり、独自の淡性と落ち着いた風情を持っています。

現代の作家たち

虫明焼には多くの優れた作家がいます。中でも、黒井一楽（1914-1996）は岡山県の重要無形文化財保持者として知られ、黒井千左（1945-）もまたその地位を受け継ぎ、瀬戸内市の重要無形文化財保持者として活動しています。さらに、黒井慶雲や黒井博史も日本工芸会の正会員として著名です。

貴重な文化財

虫明焼は岡山県の重要無形文化財にも指定されています。特に、黒井千左の虫明焼製作技術が2011年に認定され、これにより伝統技術の保存や発展が期待されています。

展覧会とイベント

最近、虫明焼に関する展覧会も数多く開催されています。例えば、2016年には「没後100年—宮川香山展」が行われ、虫明焼に関連する明治時代の陶芸が紹介されました。また、2018年の特別展「むしあげ—岡山に花開いた京の焼物—」や、2019年の特別陳列「虫明焼」も大きな反響を呼びました。

虫明焼は、長い歴史と豊かな文化を持ち、今も多くの人々に愛され続けています。

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