伊木忠澄

伊木忠澄（いぎ ただずみ） : 幕末の岡山藩の家老と茶人

伊木忠澄は、幕末の岡山藩における主要な家老であり、茶人としても名を馳せた重要な歴史的人物です。彼は伊木家の14代目当主であり、通称として「若狭」や「長門」と名乗ることがありました。一般的には"三猿斎"という号で知られることが多いです。

生い立ちと初期の経歴

忠澄は、岡山藩家老である土倉一静の三男として生まれました。母は側室であり、それに伴う慣習に従って、彼は幼少期に「菅助作」という名前で呼ばれました。天保3年、兄の早世により伊木家の養子となり、後に家督を相続しました。彼の元服は天保5年であり、藩主の池田政恭の娘との婚姻によって家族を形成しました。

政治的な立場と活動

藩主池田斉敏の突然の死去後、忠澄は彼の遺志を受け継ぐべく動きました。藩の後継者池田慶政を見つけるために、忠澄は教育や政治的仕事を行い、藩の舵取りを行いました。特に彼は、備前焼での製陶事業を再構築し、新たな技法での焼き物生産に成功しました。これが後の虫明焼の基礎となりました。

君主の下での活動

1853年に黒船来航の際、岡山藩は幕府の指令に従い警護任務を行いました。忠澄は自ら藩兵を率いてこの任務に就く重要な役割を果たしました。しかし、文久2年に通称を長門へと改めながらも、彼は藩内の勢力争いに巻き込まれることとなります。

元治元年の長州征討では、藩の意向を受け持ちながらも進軍の中止を求め、暴動の危険を回避しようとしました。しかし、藩が朝敵となることを恐れ、最終的に行動を起こさざるを得なかったのです。元治2年には家督を嫡子へ譲り隠居生活へと移行しましたが、藩政への影響力は維持しました。

茶人としての活動と晩年

隠居後も忠澄は茶人として多くの活動を行います。裏千家流の茶の湯を楽しむために茶室を設け、自らも陶芸を行い茶器を制作しました。明治に入ると、児島湾の開墾事業を試みましたが、競争が激しく、経済的には厳しい状況に見舞われました。

伊木忠澄は明治19年に69歳で亡くなりましたが、その後も高い評価を受け続け、特別に従四位を追贈されました。彼の辞世は「人はみな月雪花をたのしめど我は深山の故計の下露」と伝えられ、茶道を通じての彼の精神を象徴しています。忠澄の生涯は、藩政と茶道の両方における大きな影響力を持ったものであり、彼が残した業績は今でも語り継がれています。

もう一度検索