蛇性の婬

映画『蛇性の婬』の詳細

『蛇性の婬』は、1921年に公開された日本のサイレント映画で、監督は栗原喜三郎、原作は上田秋成の小説『雨月物語』の一篇にあたります。本作品は、谷崎潤一郎が脚本を担当するとともに、大正活映によって制作されました。

映画の撮影は、当時横浜にスタジオを構えていた大正活映で行われました。栗原喜三郎は、ハリウッドから帰国後、日本の映画界で積極的に活動した映画監督であり、独自の視点から作品を創り上げていきました。原作となる『雨月物語』は、18世紀の物語を基にした短編小説集であり、その中の一篇を映画化したことで、古典文学の映画化の重要なモデルとなっています。

キャストと制作スタッフ

主演は高橋英一であり、彼は後に岡田時彦として知られることになります。重要な役を演じた紅沢葉子は、浅草オペラに出演していた経歴を持ち、夫である古海卓二との移住により横浜に活動の場を移しました。また、鞍馬法師を演じた栗井饒太郎は、後に映画監督として名を馳せる井上金太郎にあたります。この他にも、内田吐夢や二川文太郎といった後の映画界の重鎮たちが競演しており、キャストの顔ぶれは多彩です。

映画の現状

現在、映画『蛇性の婬』の上映用プリントは見ることができず、東京国立近代美術館フィルムセンターやマツダ映画社、大阪藝術大学の玩具映画プロジェクトにおいてもその所蔵は確認されていません。したがって、映画に触れることができる手段は見当たらず、その全貌は謎に包まれたままです。サイレント映画という特性上、視覚的な表現が重要でありながら、現存するフィルムが存在しないため、作品の評価や理解は非常に難しい状況に置かれています。

映画の脚色と影響

谷崎潤一郎による脚色は、原作の文学的な美しさを活かしつつ、映像によるストーリーテリングの特性を最大限に引き出す試みが成されています。また、本作は後に溝口健二によって、別の篇を含む形で『雨月物語』としてリメイクされるなど、日本映画の中で重要な位置を占める作品でもあります。

まとめ

『蛇性の婬』は、日本の映画史において記念すべき作品の一つであり、サイレント映画というジャンルにおける重要なマイルストーンと言えます。古典文学の映画化において先駆的な役割を果たした本作は、今後のフィルムアーカイブや研究において再評価が望まれる存在です。

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