蛾蟇

ガゼットのインディーズ最終章を飾るミニアルバム『蛾蟇』

2000年代の日本の音楽シーンにおいて独特の存在感を放つヴィジュアル系ロックバンド、ガゼット。彼らのインディーズ時代最後の作品として発表されたミニアルバム『蛾蟇（がま）』は、バンドの成熟と、次のステップへの布石を示す重要な作品です。

先行シングル「reila」に続く本作は、ライブパフォーマンスを重視した楽曲群で構成されています。全編を通して使用された、1音半下げチューニング（6弦のみさらに1弦下げのドロップBチューニング）による重厚でダークなサウンドは、ガゼットの音楽性を象徴する要素となっています。

アルバム全体のイメージは、「薄汚い」「下水道」といった言葉で表現される、ダーティーでアンダーグラウンドな雰囲気。バンドメンバーは、この混沌としたイメージを楽曲制作の際に意識的に追求したと語っています。アルバムタイトル『蛾蟇』も、この世界観を的確に表現する言葉として、メンバー間で協議された結果、REITAの発案を採用したとのことです。

リードトラックとして制作された「COCKROACH」は、後にミュージックビデオも制作され、高い人気を獲得しました。この楽曲は、ヘヴィなサウンドと、REITAによる数少ないスラップ奏法を取り入れた演奏が特徴です。ライブでも頻繁に演奏され、バンドの代表曲の一つとして定着しています。歌詞は、RUKIが担当しました。

その他の楽曲も、バンドメンバーそれぞれの個性と才能が反映された魅力的な作品です。麗が作曲した「Last bouquet」は、アルバムの中で唯一の歌モノの楽曲であり、聴く者の心を掴むメロディーと歌詞が印象的です。同じく麗が手がけた「Katherine in the trunk」は、女性視点で描かれた独特の世界観が展開されています。葵が作曲した「Sugar Pain」は、親子間の性愛というセンシティブなテーマを扱った、衝撃的な楽曲となっています。SEとして収録されている「anagra」も、アルバムの世界観を効果的に演出する重要な役割を果たしています。

『蛾蟇』を引っ提げて行われた全国ツアー「the underground red cockroach」は、バンドにとって大きな転換期となりました。ツアーファイナルは、バンド史上初となる東京国際フォーラムという大規模な会場で開催され、インディーズ時代の集大成として大きな成功を収めました。

『蛾蟇』は、ガゼットの音楽性を凝縮した、インディーズ時代を象徴するミニアルバムです。ヘヴィでダークなサウンド、アンダーグラウンドな世界観、そしてメンバーそれぞれの才能が融合した本作は、ガゼットの歴史において重要な位置を占め、メジャーデビューへの道を切り開く原動力となりました。この作品から、彼らの後の活動における音楽性やライブパフォーマンスへの姿勢が垣間見れる、重要な作品と言えるでしょう。

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