蜂窩状墳墓

蜂窩状墳墓（ほうかじょうふんぼ）

蜂窩状墳墓は、石を円環状に格子状に積んでいくことで形成される擬似アーチ形状の墳墓で、見た目が蜂の巣に似ていることからこの名がつけられています。この構造は、主に地中海地域や西南アジアに広がる古代文化の中で確認されています。特にギリシャでは、青銅器時代後期にさまざまな記念建築物が建造され、その一部として蜂窩状墳墓も造られました。

基本構造と名称

蜂窩状墳墓は、ギリシャ語で「ドーム状墳墓」を意味する「θόλος τάφοι」とも呼ばれ、その形状から円形墳墓の一種としても理解されています。ギリシャでは主に墓として利用されましたが、キプロスでは住居として、シリアでは礼拝所として利用された形跡もあります。これらの用途は、地域ごとの文化や実践が異なることを示しています。

ギリシャにおける発展

ギリシャの青銅器時代後期には、蜂窩状墳墓が記念建築物として盛んに造られるようになりました。これには、円形墳墓や自然の地形を活用した墳丘墓からの進化が見られると考えられています。初期のものは平坦な土地に土が被せられた形で見られますが、紀元前1500年以降は多くが山の斜面に作られ、入るための通路が下り坂になっているのが特徴です。これらの墓は、単なる装飾的な要素だけでなく、埋葬される人々の社会的地位を示す役割も果たしています。

埋葬スタイルと副葬品

蜂窩状墳墓には、複数の埋葬が行われることが一般的でした。遺体は床に直接置かれたり、石棺や穴、石造りのベンチに安置されることがあり、さまざまな副葬品も発掘されることが多いです。これにより、このタイプの墳墓が必ずしも支配者専用のものでなかったことが示唆されます。大きな蜂窩状墳墓は主にギリシャ本土で発見されていますが、他の地域と同様に多くの墳墓が略奪に遭いながらも、その中に貴重な副葬品が残っています。例えば、スパルタ近くのVapheioでは、特に有名な黄金製のカップ「Vapheio cups」が見つかっており、ミケーネ文明の重要な遺物とされています。

中東とキプロスにおける例

中東地域、特にレバントやキプロスでも、円形の建築物が存在し、新石器時代のハラフ文化においても同様の構造が確認されています。しかし、これらの円形の住居や倉庫と蜂窩状墳墓との明確な関連性は少ないと言えます。蜂窩状墳墓は主に埋葬のために特化されており、他の用途にはあまり使用されていなかったようです。

南ヨーロッパとサルデーニャ島

イベリア半島には銅器時代の碑石記念物の中に蜂窩状墳墓が見られ、特にスペインやポルトガル南部で多く見つかっています。サルデーニャには、青銅器時代のヌラーゲと呼ばれる石造りの建物があり、これも蜂窩状墳墓と類似した技法で建設されたものです。これらの建築物は、地域による技术や材料の違いを反映しています。

オマーンの初期遺跡

オマーンに見られる蜂窩状の墳墓は、紀元前3500年から2500年のもので、当時はより湿潤な気候が保たれていたと考えられています。この地域の墳墓は基本的に埋葬専用に設計されており、ミケーネのものとは表面的な類似があるものの、構造の面での直接的な関連性は薄いとされています。

蜂窩状墳墓は古代の多様な文化を反映する貴重な遺産であり、その構造の背後には、地域や時代ごとに異なる信仰や価値観が息づいています。

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