蜂須賀氏

蜂須賀氏：戦国から明治へ、栄華と没落の物語

蜂須賀氏は、日本の歴史において重要な役割を果たした武家、華族の氏族です。その歴史は戦国時代から明治時代までを駆け抜け、栄華と没落のドラマを織りなしてきました。

不明な起源と確かな歴史

蜂須賀氏の起源は、諸説あり、いまだに確定していません。系図によれば、下野源氏や斯波氏の流れをくむと自称する説もありますが、多くの歴史家が疑問視しています。確実な記録が残っているのは、正利、正勝、家政の三代以降です。正勝は織田信長の家臣・羽柴秀吉に仕え、その活躍により大名となります。

正勝の子、家政は1585年、阿波国徳島に入封し、徳島藩25万石の藩主となりました。この時、阿波国一国17万3000石（18万6000石とも）を領有しました。関ヶ原の戦いでは東軍に与し、その後、淡路国を加増され、2ヶ国で25万7000石を領する大名となりました。

蜂須賀家は代々、徳島藩主として繁栄し、徳川将軍家から松平の名字と偏諱を賜りました。1678年、支藩の富田藩が創設されますが、1725年に徳島藩に還付されています。その後、明治維新を迎えるまで、領地の変動なく続きました。興味深いことに、8代宗鎮、9代至央、10代重喜は、高松松平家や秋田佐竹家からの養子であり、蜂須賀氏の血筋ではない時期もあります。さらに、13代斉裕の実父は11代将軍徳川家斉であり、徳川将軍の血筋となった時期もありました。

明治維新と北海道での農場経営

明治維新後、最後の藩主蜂須賀茂韶は徳島藩知事となり、廃藩置県まで務めました。1884年の華族令により、侯爵に叙爵されます。

茂韶は、北海道雨竜原野で5万町歩（1億5000万坪）の大規模農場経営に乗り出しました。アメリカから種畜、農機具、牧草種子などを輸入し、大土地所有と直営農地の試みを開始しましたが、当初はうまくいかず、小作制経営へと移行しました。しかし、その後は水稲栽培と小作経営により、大きな利益を上げるようになりました。蜂須賀農場は「御農場」と呼ばれ、雨竜村に大きな影響力を持つようになりました。しかし、1920年以降は小作争議が多発するようになり、1931年の争議を最後に大きな紛争はなくなりました。

没落への道

18代当主の蜂須賀正氏は世界的な鳥類学者として知られていましたが、犯罪に巻き込まれたことで、侯爵位を返上しました。戦後、財産争いが発生し、蜂須賀家は没落しました。現在の当主は、正氏の娘である正子氏です。

家紋と逸話

蜂須賀氏が用いる家紋は複数存在し、足利義昭から賜ったとされる桐紋、羽柴氏を憚って用いた柏紋、源氏を示唆する万字紋などがあります。

また、茂韶侯爵と明治天皇の間で起こった、愛煙家である茂韶侯爵が天皇の煙草を一本取ってしまったという逸話も有名です。この逸話では、明治天皇が蜂須賀小六を盗賊だと認識していたことが明らかになり、茂韶侯爵は歴史学者に小六の盗賊説の検証を依頼したという話が残っています。

蜂須賀家の遺産

蜂須賀家は、東京都港区三田に広大な邸宅を構えていました。その表門は、現在は西澄寺に移築されています。また、専修大学図書館には蜂須賀家の旧蔵本が所蔵されています。徳島市では毎年4月、蜂須賀まつりが開催されています。

蜂須賀氏の歴史は、戦国時代の混乱から明治時代の近代化まで、日本の歴史そのものを映し出す鏡と言えるでしょう。その栄華と没落は、後世に多くの教訓を残しています。

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