蜘蛛の巣 (アガサ・クリスティ)

『蜘蛛の巣』

アガサ・クリスティの戯曲『蜘蛛の巣』（原題：Spider's Web）は、1954年に初演された作品で、イギリスにおける人気の推理劇です。長い上演歴を持ち、774回もの公演を重ねたこの作品は、クリスティの作品の中でも特にコミカルな要素が際立っています。タイトルはウォルター・スコットの詩『マーミアン』の一節に由来し、作中ではその引用が重要なシーンに登場します。2023年7月には、藤森一朗による日本の設定を活かした新解釈版が両国エアースタジオで発表され、再び話題となりました。

あらすじ

物語は、ケント州のコップルストーン邸に住むクラリサ・ヘイルシャム＝ブラウンおよびその家族を中心に展開します。クラリサは外交官の夫ヘンリーと前妻ミランダとの間に生まれた一人娘ピパを引き取って、穏やかな日々を送っていました。

ある日の夕方、クラリサは来客との会話の中で「もし書斎で死体を見つけたらどうするか」という空想について話し合います。この何気ない「空想ゲーム」は、後の展開を予感させる伏線となります。その後、クラリサの前に現れたのは、ミランダの再婚相手であるオリバー。彼の突然の訪問が、物語に急転直下の展開をもたらします。

オリバーが帰宅したかと思うと、今度は彼の死体がクラリサの目の前に現れ、その場は一変します。彼女はこの不可解な状況にどのように対処するのでしょうか。緊迫した状況の中で、彼女は周囲の人々と共に真相を解明しようと奮闘します。

登場人物

• - クラリサ・ヘイルシャム＝ブラウン: 物語の主役。想像力豊かで、周囲を楽しませるために軽い嘘をつく若い女性。ヘンリーの後妻として、複雑な家庭環境の中で生活しています。
• - ヘンリー・ヘイルシャム＝ブラウン: 40代の外交官。無表情で落ち着いた印象を持つが、家族を大切に思う心優しい人物。
• - ピパ・ヘイルシャム＝ブラウン: クラリサとヘンリーの間の娘。12歳で、クラリサに懐いています。
• - オリバー・カステロー: クラリサの家に突然現れるミランダの再婚相手。魅力的だけれど、ペテン師的な側面も持ち合わせています。
• - ローランド・デラヘイ卿: クラリサの叔父で、元政治家。気品に満ちた魅力的な人物。
• - ミルドリッド・ピーク: コップルストーン邸の庭師で、大柄でおせっかいな中年女性。
• - エルジン: 執事で、家庭生活を支える頼りがいのある存在。
• - ロード警部およびジョーンズ巡査: 事件を捜査する人物で、物語の緊張感を引き立てます。

舞台設定

舞台は現代のケント州コップルストーン邸で、3幕構成となっています。物語は、特に家庭内での緊張感と人間関係を巧みに描写しながら進行します。第1幕では、日常的な場面が展開され、第2幕、3幕で徐々にサスペンスが増し、結末に至ります。

『蜘蛛の巣』は、単なる推理劇にとどまらず、登場人物の人間関係や心理描写も巧みに織り交ぜられています。ミステリーとコメディが融合したこの作品は、観客を引き込む魅力を持ち、現代版の解釈でも新たな注目を浴びています。

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