融通手形

融通手形とは？

融通手形とは、実際の商品取引やサービス提供といった対価関係を伴わずに発行される手形のことです。一般的に「ユウテ」と呼ばれ、商業手形の反対概念として理解されています。通常の商業手形では、手形の発行は売買契約などの現実の取引に基づいていますが、融通手形の場合は、現金が必要な者が資金調達手段として利用します。融通契約に基づき、手形を発行し、これを金融機関などで割引して現金を得ます。その後、満期までに手形金額を支払うことで決済されます。

融通手形の種類

融通手形には、大きく分けて以下の3種類があります。

1. 典型的な融通手形

このタイプでは、資金を必要とする者（被融通者A）が、信用力のある者（融通者B）に手形を発行してもらいます。その後、Aは金融機関（第三者C）に手形を割引し、現金を得ます。満期日までにAはBに手形金額を支払い、BはC（もしくはCから手形を取得した者）に支払いをします。AとBの間には、満期までにAがBに資金を返済する旨の融通契約が成立しています。

2. 交換手形（書合手形、馴合手形）

資金が必要な者AとBが互いに融通者となり、相手を受取人とする手形を発行します。それぞれの手形を金融機関（第三者C）に割引し、現金を得ます。満期日までに、それぞれが自身の手形金額を支払い、決済されます。AとBの間には、互いに手形を支払い、片方が支払いを怠った場合はもう一方の支払義務も消滅するという融通契約が成立しています。

3. 手形貸付

資金が必要な者（被融通者A）が、金融機関などの融通者Cに手形を発行し、現金を得ます。満期日までにAはC（もしくはCから手形を取得した者）に支払いをします。この場合、AとCの間には金銭消費貸借契約が成立しており、他の2つの融通手形とは異なり、後述する融通手形特有の抗弁の問題は発生しません。

融通手形の抗弁

融通手形において、重要な問題となるのが「抗弁」です。手形を取得した者が融通手形であることを知っていたとしても、単に知っていただけでは、支払いを拒否できるわけではありません。これは、融通契約の目的を達成するためです。しかし、融通手形の抗弁が、通常の人的抗弁とどう異なるのかについては、学説に様々な見解があります。

1. 生来的な人的抗弁とする見解（通説）

この見解では、融通手形の抗弁は、受取人（被融通者）にのみ有効で、転得者には引き継がれない特殊な抗弁とされています。そのため、善意・悪意に関わらず抗弁が切断されることはありません。

2. 確実との認識がある場合に悪意の抗弁を認める見解（有力説）

この見解では、悪意の抗弁が成立するためには、手形取得者が債務者の抗弁主張が確実であると認識している必要があるとします。単に融通手形であることを知っていただけでは不十分です。

3. 融通契約違反の認識がある場合に悪意の抗弁を認める見解

この見解では、被融通者が融通契約に違反した場合（例えば、支払い資金を提供しなかった場合）にのみ、悪意の抗弁が認められるとします。単に融通手形であることを知っていただけでは不十分です。

まとめ

融通手形は、現金調達手段として利用される一方、その法的性質や抗弁に関する複雑な問題を含んでいます。本稿では、融通手形の種類や抗弁に関する主要な学説を解説しました。より詳細な理解のためには、専門書を参照することをお勧めします。

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