売買

売買契約のすべて

売買とは、売主が買主に対して財産権を移転し、買主がその対価として代金を支払う契約です。贈与や交換とは異なり、売買は有償かつ双務的な契約として位置づけられます。現代社会において、商品やサービスの流通を支える重要な契約類型の一つです。

売買契約の成立

売買契約が成立するには、目的物と代金（またはその決定方法）が明確に定められている必要があります。売主は「売る」「売り付ける」、買主は「買う」「買い付ける」という意思表示を行い、契約が成立します。売買契約締結後の引渡しは、売主から見て「売り渡す」、買主から見て「買い受ける」と呼ばれます。

売買契約の性質

売買契約は以下の3つの性質を持ちます。

双務契約: 売主と買主はそれぞれ、財産権の移転と代金の支払という相互に依存する義務を負います。
諾成契約: 目的物の引渡しを待たずに、当事者間の合意によって成立します。ただし、例外規定も存在します。
有償契約: 売主と買主は、財産権と代金という対価を交換します。

売買契約の形態

売買契約は、取引の期間によって以下の種類に分類されます。

スポット売買: 一回限りの取引です。
長期売買: 継続的な取引を行う契約で、基本売買契約と個別売買契約に分けられます。

さらに、担保目的で利用される売買（売渡担保）と、本来の目的での売買（真正売買）があります。また、買戻し条項や再売買予約などの付帯条項が設けられることもあります。

他人物売買

他人の所有物を目的とする売買（他人物売買）は、日本の民法では有効とされています。売主は履行期までに所有権を取得し、買主に移転する義務を負います。もし取得できない場合は、債務不履行となり、買主は追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除などを請求できます。

現実売買

契約成立と引渡し・代金支払が同時に行われる売買を現実売買といいます。法的構成については物権契約説と債権契約説がありますが、結論に大きな差異はありません。ただし、民法の規定が全て適用されるとは限りません。

日本法における売買

日本の民法では、売買は当事者間の合意によって効力が生じます。双務契約であるため、同時履行の抗弁権や危険負担の規定が適用されます。また、有償契約であることから、売買以外の有償契約にも原則として準用されます。

目的物

売買の目的物は、譲渡可能な財産であれば、不動産、動産、用益物権、債権、知的[[財産権]]など多岐に渡ります。サービス提供型の契約であっても、売買契約と同様に扱われる場合があります。

代金額

代金は当事者間で自由に定められますが、公序良俗に反する場合は無効となります。代金は原則として通貨で支払われなければなりません。

売買と法規制

売買には、農地法、国土利用計画法、物価統制令、独占禁止法、消費者契約法など、様々な法律が適用されます。特に消費者保護に関する法律は重要です。

売買の効力

売買契約の効力が生じた場合、売主は財産権移転義務を負い、買主は代金支払義務を負います。売主は目的物の引渡し、買主への対抗要件の具備に協力する義務などを負います。また、売主には担保責任（契約不適合責任）、買主には代金支払拒絶権などが認められています。売買契約に関する費用は、原則として当事者双方が均等に負担します。

特殊な売買

定期売買: 特定の日時または期間内に履行しなければ契約目的を達成できない売買で、履行遅滞の場合、解除できます。商法では、商人間では履行請求がない場合、自動的に解除されたとみなされます。
数量指示売買: 2017年の民法改正で、契約不適合責任として扱われるようになりました。
商事売買: 商人間で行われる売買で、商法に特則があります。商法では、売主の供託権・自助売却権、定期売買の解除規定、買主の検査・通知義務などが定められています。
* 国際売買: 国際物品売買[[契約に関する国際連合条約]]（CISG）や、外為法などの国内法が適用されます。CISGは船舶・航空機、消費者取引には適用されません。

結論

売買契約は、現代経済社会において不可欠な契約です。その成立要件、性質、種類、法規制などを理解することは、経済活動を行う上で非常に重要です。本記事が、売買契約に関する理解を深める一助となれば幸いです。

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