蠅の王

概要

『蠅の王』（はえのおう、原題：Lord of the Flies）は、1954年にウィリアム・ゴールディングによって発表された小説です。本作は、聖書に登場する悪魔ベルゼブブを指すタイトルで、作品内に登場する豚の生首に蠅が群がる様子が象徴的に描かれています。影響を受けた作品には、ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』やロバート・マイケル・バランタインの『珊瑚礁の島』があり、いずれも「孤島漂着もの」として人気を博しましたが、ゴールディングの作品はそれに対する反発といえる悲劇的な展開を示しています。

ストーリー

物語は、第二次世界大戦の影響で疎開地へ運ばれるはずの子供たちが乗った飛行機が海に墜落するところから始まります。生き残ったのは少年たちだけで、彼らは南太平洋の無人島に取り残されてしまいます。最初はラルフとピギーを中心に、助けを待つために規則を作り、烽火を上げることで協力して過ごしていきます。

しかし、ラルフの統率に不満を抱くジャックは、自ら狩猟隊を結成し、自由な生活を求めて仲間たちを惹きつけていきます。次第にジャックの仲間たちはラルフから離れ、獲物を追ううちにその本能的な側面が目覚め始めます。そして、彼らは泥で顔を塗りたくり、蛮族のような姿に変貌し、ついには仲間のサイモンを無惨に手にかけるに至ります。

仲間を次々と奪われ、孤立したラルフはピギーを失い、絶望的な状況に陥ります。勢力を増すジャックは、ラルフに対して殺害の指示を出し、ラルフはその脅威から逃れるべく奮闘します。ジャックたちの放った火が、逆にラルフたちを救助へと導く結果になりますが、それは多くの犠牲を伴ったものでした。

物語の結末でラルフは、無秩序と暴力の中で失った仲間たちのことを思い涙を流すものの、戻ってこない死者たちを悔やむことを余儀なくされます。

登場人物

• - ラルフ: 物語の主人公であり、最初に隊長に選ばれます。彼は知恵があり、仲間をまとめ、サバイバルに必要な知識を提供します。

• - ジャック: ラルフが隊長になったことに不満を持ち、狩猟隊を結成して反抗します。彼は仲間を奪い、最終的にはラルフを討とうとします。

• - ピギー: 太っていて臆病な性格ですが、知恵にあふれ、最後までラルフに寄り添いますが、悲劇に見舞われます。

• - サイモン: 感受性が高い少年で、彼は仲間たちの中に潜む悪とも向き合うことになりますが、集団に襲われて命を落とします。

• - ロジャー: ジャックの手下で、ピギーを殺害する役割を果たします。

日本語訳

この小説は、平井正穂訳と黒原敏行訳の2つの版が存在し、様々な読者層にアプローチしています。

映画化

『蠅の王』は1963年と1990年に2度映画化されています。

• - 1963年版: ピーター・ブルック監督によって制作。日本では未公開ながら、核攻撃後の設定が特徴的です。

• - 1990年版: ハリー・フックが監督を務め、より現代的なアプローチが取り入れられました。

この物語は、無人島という閉じられた空間での人間性の探求、暴力、権力の構造などを通じて、非常に深刻で考察を促す内容となっています。

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