血の伯爵夫人

映画『血の伯爵夫人』

『血の伯爵夫人』（原題：The Countess）は、2009年に公開されたドイツとフランスが共同制作した伝記映画です。吸血鬼伝説の実在のモデルとして知られるバートリ・エルジェーベト（エリザベート・バートリー）の生涯を描いており、監督、脚本、音楽を務めたのはジュリー・デルピーです。彼女は主役も演じ、物語の中心にある女性の悲しみと愛の喪失を表現しています。

本作は、過去に製作された多くの映画がエルジェーベトの残忍さを強調したホラー作品であるのに対し、より人間的な視点からエリザベートの愛と苦悩を探るものとなっています。特に彼女が運命の恋人と引き裂かれる過程と、その後の彼女の心の変遷に焦点を当てています。

ストーリー概要

エリザベートはハンガリーの名門貴族の娘として生まれ、15歳でナーダジュディ伯爵と結婚し、3人の子供を持ちます（史実では3男3女）。彼女の夫は優れた武人として名を馳せ、エリザベートもまたその経営手腕で広く尊敬されていました。しかし、彼女の運命は夫の突然の死によって大きく変わります。

21歳になったエリザベートは、青年イシュトヴァンと恋に落ちますが、彼の父親であるトゥルゾ伯爵が二人の関係を引き裂いてしまいます。エリザベートは自らの年齢による恋の終焉を悔い、若さと美しさに異常な執着を持つようになりました。彼女は、偶然の出来事から処女の血が美しさを保つ秘薬であると信じ、無慈悲にも村の少女たちを次々と殺害するという恐ろしい行為に走ってしまいます。

一方でトゥルゾ伯爵は、エリザベートの財産を狙い続け、ヴィザクナ伯爵を彼女に近づけます。ヴィザクナはエリザベートの愛人となり、彼女のサディストな一面を引き出す役割を果たしました。エリザベートの暴力行為は次第に王の耳にも入るようになります。

捕まったエリザベートは、その後自らの運命をどうしようもない形で迎えます。彼女はトゥルゾ伯爵の計らいで、故郷の名門家出身であるために処刑を免れ、暗室に幽閉されてしまいます。そこで彼女は自らの腕に噛み付き血を飲み、そのまま失血死を迎えます。

キャスト

主なキャストには、エリザベート役のジュリー・デルピー、彼女の恋人イシュトヴァン役のダニエル・ブリュール、財産を狙うトゥルゾ伯爵役のウィリアム・ハートなどが名を連ねています。また、エリザベートの親友で財産を管理するアンナ役のアナマリア・マリンカも重要な役割を果たしています。

映画の評価

本作は、そのテーマの重さやエリザベートの複雑な心理描写により、見る者に深い印象を残します。彼女の真実の愛と恐怖が交錯する物語が、観る者の心に強いメッセージを伝えます。日本では、2009年に「フランス映画祭」で上映されたのみで、その他の劇場公開は行われていませんが、WOWOWでの放送も行われました。

この映画は、ただのホラーストーリーと受け取るのではなく、人間の内面的な苦悩と愛、喪失、そしてそれに伴う悲劇について考えさせられる作品として位置づけられています。

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