血は立ったまま眠っている

『血は立ったまま眠っている』

概要

『血は立ったまま眠っている』は、作家・詩人であり演出家でもある寺山修司が23歳の時に執筆した戯曲です。この作品は、1960年に『文學界』に初めて発表され、彼の詩の一節「一本の木にも流れている血がある そこでは血は立ったまま眠っている」を基にしています。寺山はこの作品を自身の「処女戯曲」と位置づけているものの、実際には1956年に『忘れた領分』という戯曲をすでに書いています。

背景

本作が誕生した時代は、安保闘争など社会情勢が非常に緊迫していた1960年代の日本です。この時期における若者たちの心情や社会への反発が、物語の主題として鮮やかに描かれています。若きテロリストの兄弟のような二人を中心に、青春期の葛藤や深い怒りが生き生きと語られており、彼らを通じて多くの若者が抱えるさまざまな不安や焦燥感が視覚化されています。

上演歴

この戯曲は、初演以来さまざまな演出家によって上演されています。特に有名なのは、1960年に浅利慶太の演出によって劇団四季が上演したもので、寺山はこの機会に早稲田大学の劇団との出会いを経て、演劇実験室・天井桟敷の結成にいたったと語っています。

また、2010年には蜷川幸雄が演出を担当し、Bunkamuraシアターコクーンで再演されました。今回のキャストには、森田剛（良）、窪塚洋介（灰男）、寺島しのぶ（夏美）、六平直政（床屋）、三谷昇（老人）など、豪華な顔ぶれが揃っていました。音楽は朝比奈尚行と遠藤ミチロウ、美術には中越司、照明には服部基が参加し、特別な協力を得て制作されています。

テーマとメッセージ

『血は立ったまま眠っている』は、単に社会的なテーマを扱うだけでなく、個々のキャラクターの内面に迫る深い洞察も含まれています。登場人物を通じて、彼らの感情や思考、そして決断を巡る葛藤が描かれており、観客は彼らの苦悩を共有することができます。

この作品は、若者たちの反抗精神や、社会と個人との対立を探究し、またその中で形成されるアイデンティティや連帯感をも表現しています。戯曲は、現代に生きる私たちにとっても重要なメッセージを投げかけており、自由や自己表現の大切さを思い起こさせるものとなっています。

参考文献

本作に関する情報は、角川文庫から出版されている『毛皮のマリー・血は立ったまま眠っている』に詳しく記載されており、戯曲の詳細や背景について知るための貴重な資料となっています。

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