行平次雄

行平次雄の生涯

行平次雄（ゆきひら つぎお）は、1931年8月19日に旧満州の旅順で生まれ、2010年4月1日に78歳でその生涯を閉じました。彼は、山一證券の社長および会長を歴任し、日本証券業協会の会長も務めた、日本の証券業界において重要な人物でした。

生い立ちと学歴

旧制奉天第一中学校在学中に終戦を迎え、両親とともに福岡県豊前市へ引き揚げました。その後、一橋大学法学部に進学し、1955年に卒業。この学歴が、後の彼のキャリアを形成する上で重要な基盤となりました。

山一證券入社とキャリア

大学卒業後、行平は山一證券に入社し、投資信託本部に配属されました。ここでは、後に社長となる植谷久三、横田良男の下で働き、同じ本部には三木淳夫もいました。一時、証券団体協議会専門調査員として出向し、日興證券の岩崎琢弥など、後の四大証券の幹部となる人物たちと交流を深めました。

証券団体協議会からの帰任後、横田良男の引きで金融法人部に所属。横田が副社長に昇進した際には、後任の企画室長に抜擢されました。1978年には取締役に就任し、順調にキャリアを重ねていきました。

三菱重工転換社債事件とロンドン転出

専務時代には、三菱重工転換社債事件が発生。総会屋との交渉の中で、一時的に山一證券本社の取締役を外れ、ロンドンにあった山一インターナショナル会長へと転出しました。この経験が、彼の経営者としての資質を試されることとなります。

社長就任とバブル崩壊

1987年に取締役副社長、1988年9月6日には社長に就任しました。しかし、バブル崩壊後の株価暴落により、山一證券は深刻な含み損を抱えることになります。行平は、この問題に対し適切な判断をせず、先送りを繰り返しました。さらに、他社名義の損失を自社の簿外損失として計上したことで、損失額は2,000億円を超えるまでに膨れ上がり、これが山一證券破綻の大きな原因となりました。

会長就任と破綻

1992年6月26日に会長に就任した後も、社長室に居座り続け、実質的な決裁権限を握っていました。1997年7月1日には日本証券業協会会長に就任しますが、その直後に山一證券が総会屋への利益提供を行っていた疑惑が発覚。記者会見では「違法な取引はない」と述べましたが、その直後に東京地検特捜部による強制捜査が行われました。同年8月11日、利益供与事件の責任を取り、三木淳夫社長など他の経営陣とともに会長を退任しました。

逮捕と有罪判決

1998年3月4日、行平は山一證券経営破綻の原因となった「飛ばし」処理による証券取引法違反、および粉飾決算の容疑で逮捕・起訴されました。2000年3月には懲役2年6ヶ月、執行猶予5年の有罪判決が確定し、彼のキャリアは悲劇的な結末を迎えました。

死去

2010年4月1日、東京都内の病院で死去。78歳でした。彼の死は、日本の証券史における一つの時代の終わりを象徴するものでした。

山一證券の破綻

行平次雄の経営判断の誤りが、山一證券を破綻に導いたことは明らかです。バブル崩壊後の経済状況を正確に把握し、適切な対応を取るべきでしたが、その判断を誤り、問題を先送りした結果、深刻な事態を招いてしまいました。簿外損失の拡大、総会屋への利益提供、そして証券取引法違反という、一連の出来事は、彼のキャリアに大きな汚点を残し、山一證券の歴史に暗い影を落としました。

行平次雄の生涯は、証券業界における経営の難しさ、そしてバブル経済の恐ろしさを象徴する物語として、後世に語り継がれるでしょう。

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