行方久兵衛

行方 久兵衛の生涯と浦見川開削

行方 久兵衛（なめかた きゅうべえ、1616年 - 1686年）は、小浜藩士として三方郡の郡奉行を務め、特に治水に関する事業に尽力した人物です。彼の名は正成であり、父の行方正通の跡を継ぎました。久兵衛は、治水工事の中でも浦見川の開削事業において顕著な功績を残しました。

生い立ちと初期の経歴

行方久兵衛は武蔵国入間郡の川越に生まれ、22歳で行方家の家督を相続しました。1634年に川越藩が小浜藩に転封される際、久兵衛は小浜藩に仕官し、1651年から作事奉行を経て、1659年には三方郡の郡奉行に就任しました。

彼の在任期間中の1662年、三方湖と水月湖を結ぶ気山川が地震で塞がれ、大規模な水害が発生しました。この大災害を受けて、藩命に従い、久兵衛は浦見川の開削を進めることになります。

浦見川開削の背景

浦見川の開削には、以前から行われていた新田開発の計画がありました。地震前にも数度の試みはあったものの、度々中断されていました。しかし、1662年の地震によって湖水が氾濫し、さらなる切迫した状況下での開削が必要となったのです。

地震とその影響

1662年5月1日、マグニチュード約7.5の近江・若狭地震が発生し、その影響で上瀬川は干上がり、湖が氾濫しました。この事態を受け、小浜藩主は「浦見坂」を開削し、余剰な水を海へ流す計画を立てなければならなくなりました。

久兵衛はこの工事を主導し、地震から20日後の5月23日に作業を開始しましたが、岩盤に阻まれ工事は遅々として進みませんでした。それでも彼は宇波西神社に参拝し、神のお告げを受けたことを信じ、工事を続行しました。

開削工事の完成

1662年の9月には水路が開かれ、1663年の5月には普請が完了しました。浦見川の長さは約236メートルで、その工事に従事した人員は約22万5,490人にのぼりました。経費は1,659両2歩とされ、開削により新たに345石の新田も生まれました。

流域の改修

浦見川の開削に続く形で、早瀬川の改修事業も行われました。この過程で川幅が広げられ、農業用水の確保が図られました。また、1665年には耳川から水を取り入れる荒井用水の工事が完了し、広範囲な新田開発が実現しました。

晩年と遺産

久兵衛は、荒井用水による新田開発の功績により240石加増され、1675年には関東組者頭に任じられました。彼は1681年に引退し、1686年に71歳で亡くなります。彼の業績を称えるために、宇波西神社には「行方久兵衛翁頌徳碑」が建立されています。

行方久兵衛の治水に関する取り組みは、地域の農業や生活に多大な影響を与え、今なお彼の功績は語り継がれています。

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