術中迅速病理診断

術中迅速病理診断について

術中迅速病理診断（じゅつちゅうじんそくびょうりしんだん）は、外科手術や内視鏡手術中に行われる特別な病理診断の手法です。手術中には病変部を迅速に評価し、その性質を見極めることが求められます。具体的には、腫瘍が良性か悪性かを判断したり、病変の取り残しや転移の有無を確認するために利用されます。

診断のプロセス

手術中に診断が必要な部位から病変を切り取り、迅速病理標本を作成します。この標本は採取された組織を液体窒素で凍結した上で、ミクロトームで薄く切り出してプレパラートに貼り付け、染色を施したものです。こうした手法は、一般的な病理標本作成過程に比べて急速に行われるため、あくまでも応急的な診断となります。

精度と技能

病理医は顕微鏡を使って迅速に観察を行いますが、応急処置的な標本のため、通常のパラフィン包埋による標本と比べると診断の難易度が高くなります。特別な技能が求められるこの手法は、絶対的な医療行為であり、慎重に行われなければならないのです。

また、手術中に得られた腹水や組織から得た細胞診標本を用いることもあり、その場合は「術中迅速細胞診断」と呼ばれます。たとえば、胃がんの腹膜転移を診断することが可能です。

患者へのメリット

術中迅速病理診断の最大の利点は、手術中に得られた結果を基に、治療方針を即座に決定できる点にあります。たとえば、肺にしこりが見つかった場合、そこで悪性と判明すれば即座に切除手術が行われます。この手法により、無用な大掛かりな手術を避けることができ、患者にとっての負担を軽減し、医療費の削減にもつながります。

さらに、病変の境界が不明瞭な症例では、術中迅速病理診断が特に重要です。これにより、病変の取り残しを確認しながら安全に手術を進めることができるのです。

例として、臨床的に腋窩リンパ節転移が陰性の乳癌においては、センチネルリンパ節生検を行い、陰性であれば腋窩リンパ節郭清を省略できます。これにより、術後の合併症や上肢機能障害が軽減されるため、患者の生活の質（QOL）が向上することが期待されます。

医療費の削減効果

術中迅速病理診断の導入により、手術回数や入院日数が減少することが見込まれ、医療費の削減に寄与します。たとえば、しこりが悪性であることを手術中に判明させることで、1回の手術で済むことが多く、治療の効率が上がります。また、悪性腫瘍の場合、術中に取り残しがないかを確認することができるため、再発のリスクも低減されると考えられます。

広告での活用

最近では、医療機関が「術中迅速診断を行い、可能な限り温存手術を行います」といった内容を広告に使えるようになっています。患者は、どの医療施設がこの技術を提供しているかを確認し、選択肢を広げることができます。

遠隔病理診断の可能性

病理医がいない地域では、通信技術を使って術中の顕微鏡画像を遠隔で観察する「遠隔術中迅速病理診断」が行われることもあります。このように、迅速病理診断はさまざまな形で医療の現場に貢献しており、今後もその重要性は増していくでしょう。

もう一度検索