衝動殺人 息子よ

映画『衝動殺人 息子よ』について

『衝動殺人 息子よ』は、日本の映画史に残る1979年公開の作品で、長編ノンフィクションを原作としています。この映画は、犯罪被害者の遺族が直面する過酷な現実と法的制度の不備を描いており、観客に強い印象を与える内容となっています。製作は松竹とTBSが手掛け、監督は名匠・木下惠介が務めました。主演には若山富三郎と高峰秀子を迎え、特に若山はその演技で多くの映画賞を受賞し、評価を高めました。

あらすじ

物語は京浜工業地帯を舞台に、工場を経営する川瀬周三の悲劇から始まります。周三は視力を失い、26歳の息子・武志が工場を手伝うことになりました。しかし、ある晩、武志は通り魔に襲われ、命を落としてしまいます。彼の口から「仇はとってくれ」との言葉が残され、周三は深い絶望に沈むことに。

事件を巡って社会は騒然となり、犯人は少年であることが判明します。彼はヤクザにけしかけられ、無抵抗な相手を狙ったと言います。周三は、この理不尽な事件に対し、警察や法律の無力感を痛感します。法廷での判決は軽すぎると感じた周三は、公的補償の制度に疑問を持ちます。

法的制度への挑戦

周三は、息子を失った悲しみに暮れる中で、役所の法律相談を受けましたが、被害者に対する冷たい対応に愕然とします。規定の枠組みの中では、ただの補償があるだけ。彼は法を学ぶ決意をし、独学で法律書を読み漁りました。

その後、周三は他の被害者遺族と出会い、彼らが経済的困窮に陥っている現実を知ります。特に、犯罪被害者の遺族が人々の目に見えない苦しみを抱えていることに気づかされます。彼は大学教授の中谷と意見を交換し、犯罪被害者への国家補償制度の必要性を認識します。

周三は、全国の被害者遺族と力を合わせ、署名を集めて国会に請願書を提出しました。

悲劇と勇気

物語の途中、周三は視力が悪化し、失明が近づいていると告げられます。それにもかかわらず、周三は運動を続け、周囲の人々とともに活動を続けました。ついに、彼の声がマスコミや国会に届き、多くの人々に支持されるようになります。

しかし、その成功の直後、周三は心筋梗塞で亡くなります。彼は、息子が命を落としたのと同じ病院で生涯を閉じました。周三の努力と情熱は、法律や制度の改革を促し、以後の社会に影響を与えることとなりました。

結論

『衝動殺人 息子よ』は、単なる映画ではなく、社会への警鐘を鳴らす重要な作品です。家族を失った悲しみと、それに立ち向かう父の強い意志が、観客に深い感動をもたらします。社会制度の不備を訴えることで、今後の変化を期待させるメッセージが込められています。

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