衝突する宇宙

書籍『衝突する宇宙』の概要と影響

『衝突する宇宙』（しょうとつするうちゅう、Worlds in Collision）は、アメリカの精神分析医イマヌエル・ヴェリコフスキーによって1950年に出版された著作です。出版社からは疑似科学書として評価されていますが、その内容は多くの反響を呼びました。本書では、古代の神話や伝説、歴史的文献に基づき、数々の天変地異が実際に発生したものであると主張し、その根本原因として特定の彗星の地球への接近を取り上げています。

主要な主張

著者は、木星から生まれた彗星が地球に2度接近し、その影響で火星の軌道が乱れ、現在の金星の軌道が形成されたとする奇想天外な理論を展開しています。特に、紀元前1500年にこの彗星が地球に近づいた際に、「出エジプト記」のエピソードにあるように海が割れ、モーゼらがエジプトから脱出を果たしたと述べています。また、52年後に金星が再び地球に接近し、自転を止める現象が起こったとの主張も含まれています。

ヴェリコフスキーは573の参考文献を引用し、その理論に信憑性を持たせようとしましたが、引用の正確性が疑問視されることもありました。このため、アメリカでは「ヴェリコフスキーズ・ソース」と呼ばれる全6巻の資料集が出版され、彼の主張の正確性について詳細な調査が行われました。

科学界の反応

本書が出版されると、科学界から多数の反発を受けました。影響力のある出版元であるマクミラン社は、圧力を受けて『衝突する宇宙』とその続編『激変の地球』の出版権を別の出版社であるダブルデイ社に譲渡しました。さらに、アメリカ科学振興協会の主催でカール・セーガンを含む科学者たちとの討論会が開かれ、その講演内容は「Scientists Confront Velikovsky」として記録されました。この討論会では、科学者たちがヴェリコフスキーの主張に反論を展開しました。

この時期、反権威主義の潮流が強まっており、専門家たちによる反発が逆にヴェリコフスキーを「反権威主義の殉教者」として支持する動きを生み出す結果となりました。このような背景の中、本書は多くの読者に興味を持たれ続ける要因となりました。

日本での出版

日本においては、天文学者の鈴木敬信が翻訳を手掛け、1951年に法政大学出版局から刊行されました。この翻訳に対し、鈴木は学問的評価から否定的な意見を受けましたが、再版の際には孟子の言葉を引用して、書を読むことの重要性を訴えました。日本語版はその後も改訂され、多くの版が刊行されています。

現在の入手状況

『衝突する宇宙』は、現在もハードカバーやペーパーバック、キンドル版で入手可能であり、その内容は今日でも検証可能です。ヴェリコフスキーの主張を再評価するきっかけとして、この書籍は興味深い位置を占めています。

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