衣棚通

衣棚通（ころものたなどおり）

衣棚通は、京都市内に位置する南北の通りの一つで、北側は加茂川右岸の加茂街道から、南側は六角通までの範囲に広がっています。通りの途中には、紫明通から約200メートル南下したところにある玄武公園の横も含まれており、また一条通と上長者町通との間で一部が分断されています。一条通の北側では、通りがいくつかのセクションで東西にずれる特徴があります。

この通りは平安京の時代には存在しておらず、豊臣秀吉による1590年の天正の地割により新設されました。その後、衣棚通は北へ延長され、最終的には賀茂川に到達しました。「衣棚通」という名称は、秀吉の地割りによって室町と新町の中間地域に新たに作られた通りであり、この辺りには過去に多くの法衣を取り扱う店があったことに由来しています。秀吉が寺町を形成する以前には、周辺に多くの寺院が存在し、経師屋や仏師、法衣屋などが集まっていたことが知られています。

弘治年間には、「千切屋」と呼ばれる法衣店がこの通りを拠点として独占的に成長し、その一門は最盛期には周辺に100軒以上の店舗を持っていたという歴史があります。衣棚通は、江戸時代には東隣の室町通と同様に多くの呉服店が立ち並び、これが通りの名前の由来となりました。しかし、享和の頃以降は呉服店の数が減少し、現在では室町通に比べて和装関連の業者は少なくなっています。

さらに、三条通から南に向かう路地は「了頓図子」として知られています。ここで「了頓」とは、桃山時代にこの地域に住んでいた茶人、広野了頓を指します。「図子」という言葉は、通り抜け可能な路地を意味し、了頓が彼の自宅内に通行を許可していたため、このように呼ばれるようになりました。このように、衣棚通はただの通りとしての役割だけではなく、歴史的な背景や文化的な価値を有する重要な場所となっています。

この通りの特徴や歴史は、訪れる人々に過去の京都の面影を感じさせる要素を提供します。また、京都の他の地域との交流を促進し、地域の伝統を未来へと継承していく重要な役割を果たしています。

もう一度検索