袋澗

袋澗（ふくろま）について

袋澗（ふくろま）は、北海道の日本海沿岸に存在する漁獲したニシンを一時的に保存するための港湾施設です。この施設は、大正時代の中頃まで栄えていたニシン漁の歴史と直接的に深い関わりがあります。

歴史的背景

北海道の海岸線は、特に積丹半島や寿都、島牧といった地域において、ニシン漁が盛んに行われてきました。しかし、これらの地域は断崖絶壁が直接海に見下ろしており、漁獲したニシンを陸に揚げるための適切な場所が不足していました。そのため、捕獲したニシンを網の中で一時的に海中に保管する必要が生じたのです。しかし、ニシン漁期中には時化が多く、網が流出する事態も頻発しました。このような状況では、努力して得た漁獲が水の泡になってしまうことも。そこで地元の網元たちは、私財を投じて石垣の堤を築き、その内部にニシンを小袋に分けて保管する施設、すなわち袋澗を設けました。

袋澗の構造

袋澗は、石垣で囲まれた静かな空間を提供し、時化の影響を受けずにニシンの保存が可能でした。加えて、この施設は船舶の停泊場所や水揚げ場としても機能しており、地域の漁業活動の中心的な役割を果たしていました。袋澗は個人の所有物として整備されており、つまりは「ミニ漁港」としての性格を帯びていたのです。

現在、袋澗は積丹半島を中心に約300ヶ所存在すると言われ、その大多数は明治後期から大正前期にかけて築造されました。この時期に袋澗を所有していた網元は、ニシンの漁獲量が多く、その資金力も高かったことでしょう。石垣は多くが間知石による練積構造で作られているほか、石枠型や堤のない切澗といった種類も見られます。

ニシン漁業の衰退と袋澗の変遷

昭和に入ると、ニシン漁は衰退の一途をたどり、昭和中頃には多くの袋澗がその役目を終えました。それでも、いくつかの袋澗は漁港に改造され、新たな役割を持つようになりました。例えば、日司漁港や神岬漁港、川白漁港などは、かつての袋澗が改修された施設です。

ただし、これらの袋澗は、建設当時の面影を残しているわけではなく、改修される中でその形状が変わることも多かったです。多くの袋澗はその後放置されてしまっており、原型を留めていないものも存在します。ただ近年では、島牧村の袋澗が「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」に選出されるなど、保存や復興へ向けての動きも見られます。

参考資料

袋澗に関する情報は、以下の文献に詳しく記載されています。

• - 積丹半嶋袋澗調査図: 1928年に北海道庁がまとめたもので、往時の袋澗の状況を知ることができます。
• - 積丹半島の「袋澗」北海道文化財研究所調査報告第2集: 1987年に現地調査の結果がまとめられています。
• - 積丹町史: 地域の歴史を知る上での重要な資料です。
• - ニシン漁を支えた土木技術: 著者 石田享平による研究です。

このように、袋澗は北海道の漁業史において重要な役割を担っており、今後の保存や活用に期待が寄せられています。

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