装甲兵員輸送車

装甲兵員輸送車（APC）について

装甲兵員輸送車（そうこうへいいんゆそうしゃ、Armored Personnel Carrier、APC）は、主に軍事において歩兵を安全に輸送するために設計された車両です。その名が示す通り、装甲を備えており、戦場でも搭乗者を保護する機能が求められます。APCは、歩兵のみならず時には民間人も載せることができるため、「装甲人員輸送車」とも訳されることがあります。APCの主な目的は輸送であり、前線での積極的な戦闘参加を意図した歩兵戦闘車（IFV）とは異なる設計コンセプトです。

歴史的背景と発展

自動車の発明後、軍事利用への関心が高まる中、第一次世界大戦ではフランス軍がタクシーを徴用し、迅速な兵員輸送を実現しました。この成功により、各国の軍隊が自動車を活用し、自動車化歩兵部隊の生成が加速しました。当初は装甲のない大型トラックが用いられましたが、トンネルを通る兵員や、不整地での障害物回避能力が求められました。

第一次大戦中、登場したマーク IX 戦車は、最初の装甲兵員輸送車とされていますが、戦局にはほとんど寄与できませんでした。第二次世界大戦前に新たな戦術思想が生まれ、歩兵部隊は重装備の戦車に随伴することが求められるようになりました。それに伴い、APCはトラックから無限軌道を装備したハーフトラックへと進化。こうした改良により、装甲を施した車両が兵を守り、戦場に送る役割を果たすようになりました。

冷戦期の進化

冷戦中、APCは次第に強力な武装を備え、歩兵戦闘車（IFV）としての機能も加わってきましたが、それと同時にコストを抑えつつ軽装備部隊向けのAPCの開発も続けられました。装輪式APCの導入により、多くのNATO加盟国で装輪装甲車が普及しました。しかしながら、旧式の装軌式APCも依然として使用され続けました。

近年では、地域紛争における非対称戦環境において、装甲兵員輸送車は新たな課題に直面しています。対戦車ロケット弾や地雷、即席爆発装置（IED）にさらされることが増え、防御力の向上が求められています。そのため、旧式戦車を改修し生存性を向上させたAPCや、対爆発防御に特化したMRAP（機動防護車両）のような新たな車両が登場しています。

主な装甲兵員輸送車

さまざまな設計によって生まれたAPCには多くのモデルが存在します。たとえば、M113装甲兵員輸送車やFV432などの旧式の装軌式APCが依然として多くの国で運用されており、近代的な装輪式APCがその役割を引き継いでいます。これらのAPCは、移動だけでなく、指揮通信車両や自走迫撃砲など異なる用途に転用されることも多いため、多様な派生型を生み出しています。

まとめ

装甲兵員輸送車は、戦場での兵員輸送に不可欠な存在であり、その歴史は数十年にわたります。時代と環境に応じた改良が加えられ、今後も進化し続けることでしょう。

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