MRAP

MRAP（耐地雷・伏撃防護車両）とは

MRAP（Mine Resistant Ambush Protected、耐地雷・伏撃防護車両）は、アメリカ国防総省がイラクおよびアフガニスタンに駐留する兵士を保護するために大量に調達した装輪装甲車です。路肩爆弾や即席爆発装置（IED）による攻撃から兵士の命を守ることを目的として、2007年からイラクへの配備が開始されました。

開発の背景

2003年のイラク戦争開戦後、アメリカ軍はIEDによる攻撃に苦しめられました。特に、兵站部隊を護衛する軽装甲車両が標的となり、死傷者が続出。ハンヴィーなどの既存車両の装甲を強化する対策も行われましたが、IEDの威力には対応しきれず、国民からの不満も高まりました。そこで、国防総省はIEDに対する防御能力に特化した装甲車両の導入を決定し、MRAP計画が始まりました。

MRAP計画

MRAP計画は、当初、アメリカ海兵隊が進めていた装輪装甲車両の開発・取得計画でした。その後、陸軍のMMPV（Medium Mine Protected Vehicle、中型地雷防護車両）計画と並行して進められましたが、MRAP計画の方が進展していたため、イラク駐留米軍全体に対する緊急計画として採用されました。

MRAP計画は、MRAP-I（現有取得計画）とMRAP-II（新規開発計画）の2段階で構成されています。

MRAP-I：既に生産されている装甲車両を迅速に調達し、イラクに送ることを目的としています。用途に応じて、以下の3つのカテゴリーに分類されます。
カテゴリー1：MRAP-MRUV（耐地雷汎用車輌）：市街地でのパトロールや連絡に使用
カテゴリー2：MRAP-JERRV（統合爆発物処理即応車輌）：コンボイの護衛や兵員輸送に使用
カテゴリー3：爆発物処理/IED除去に特化した車両
* MRAP-II：MRAP-Iよりも高い防御能力を持つ新型車両の開発を目指す計画です。

MRAPの特徴

MRAPの最大の特徴は、車体下部をV字型にした「Vハル」構造です。これにより、地雷やIEDの爆発エネルギーを分散させ、乗員への被害を軽減します。また、車体側面や底面の装甲が強化され、ランフラットタイヤの装備により、被弾時にも一定距離の走行が可能です。

しかし、Vハル構造のために車高が高く、車体も大型化しているため、隠蔽性に劣り、正規戦には不向きであるという欠点もあります。

配備後の状況と課題

MRAPの導入により、IEDによる死傷者は大幅に減少しました。しかし、アメリカ軍のイラク撤退やアフガニスタンからの撤退に伴い、大量のMRAPが余剰となり、アメリカ合衆国の警察などに払い下げられました。しかし、軍隊仕様であるため維持費が高く、運用上の課題も指摘されています。

また、イラクでは、爆発成形浸透体（EFP）と呼ばれる新たな脅威が登場しており、MRAPに対する有効性が懸念されています。ゲリラ側が爆薬量を増やすことで、MRAPの装甲を突破する可能性も指摘されています。

まとめ

MRAPは、IEDの脅威から兵士を守るために開発された特殊な装甲車両です。その導入は、兵士の生存率向上に大きく貢献しましたが、運用コストや新たな脅威への対応など、課題も残されています。MRAPの経験は、今後の装甲車両の開発において重要な教訓となるでしょう。

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