裏白峠

裏白峠：歴史と交通の要衝

滋賀県甲賀市と京都府宇治田原町を結ぶ裏白峠は、標高380メートル地点に位置する峠です。かつては国道307号の旧道として知られ、急勾配と連続する急カーブが特徴的な、交通の難所でした。しかし、近年では茶屋トンネルを含む全長約2キロメートルのバイパス道路が開通。これにより、長年地域住民やドライバーを悩ませてきた交通渋滞が大幅に解消されました。

由来と歴史

裏白峠という地名は、近江国から見て山城国が裏側に位置することから由来するといわれています。山城国側からは「越田越」と呼ばれており、古くから交通の要衝として機能していました。

平安京遷都後には、伊勢神宮への参詣路として利用され、近世には近江と京の間に位置する地の利を生かして茶の流通路として栄えました。江戸時代には、徳川家康が伊賀越えの際にこの峠を通過したという逸話も残されています。奥山田から裏白峠を越え、朝宮、小川を経て伊賀へと進んだと伝えられています。

また、国境確定の経緯も興味深い歴史的背景です。正保国絵図の作成や延宝検地の際、近江国と山城国は裏白峠を境とする国境を巡って争いを繰り広げました。最終的に、1678年（延宝6年）に幕府の裁定により、現在の国境線が確定しています。この国境問題は、裏白峠が地域社会に深く関わってきた証左と言えるでしょう。

近代以降の変化

昭和29年（1954年）1月20日には、裏白峠を含む区間が主要地方道枚方水口線に指定されました。その後、昭和45年（1970年）4月1日には、枚方水口線が国道307号に指定替えされています。そして、平成12年（2000年）12月20日、長年の課題であった交通難所解消のため、裏白バイパスが部分供用を開始。これにより旧道となった裏白峠は、往時の賑わいから一転、静かな歴史の道として現在に至っています。バイパス開通は、交通の利便性向上だけでなく、歴史的遺産の保全という観点からも重要な出来事だったと言えるでしょう。

まとめ

裏白峠は、急勾配と急カーブという険しい地形、そして古くからの交通路としての歴史、そして国境問題といった複雑な歴史的背景を持つ、魅力的な峠です。バイパス道路の開通により、交通の利便性が大きく向上した一方で、歴史的価値は変わらずに、現在も人々の記憶の中に大切に保存されています。この峠の歴史を知ることで、地域の文化や歴史への理解が深まることでしょう。

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