正保国絵図

正保国絵図について

正保国絵図（しょうほうくにえず）は、江戸幕府が全国の大名に作成を命じた国ごとの地図であり、後の正保日本図（日本総図）の基礎となりました。この事業は、正保元年（1644年）に始まり、郷帳や城絵図と並行して進められました。大目付の井上政重が責任者となり、各藩から提出された報告書は、幕府の文庫である紅葉山文庫に収められました。完成までには数年を要し、慶安4年（1651年）よりも後になったとされています。

作成の背景と目的

幕府は、全国の地理情報を把握するために、過去にも国絵図の作成を行っていました。正保国絵図は、2回目の全国的な国絵図作成事業であり、1回目の慶長国絵図が主に西日本を対象としていたのに対し、今回は全国68ヶ国を網羅しました。この国絵図は、単なる地図ではなく、軍事や交通に関する情報も詳細に記録され、縮尺も1/21600（1里6寸）に統一されました。これにより、実用性が重視されたと考えられます。

作成過程と特徴

正保国絵図は、各国ごとに作成され、蝦夷地や琉球も含まれていました。寛文9年（1669年）には、北条氏長が責任者となり校訂作業が行われています。しかし、明暦3年（1657年）の明暦の大火で、多くの正保国絵図が焼失したため、幕府は一部の国に対して再提出を求めました。現存している正保国絵図は、羽後、出羽、秋田、仙北、出羽六郡、庄内三郡、新庄領、奥州南部十郡、南部領、山城、摂津、安芸、対馬、筑後、豊後などで、大名家ゆかりの原本や写本も残されています。国立歴史民俗博物館には、複製が所蔵されています。

後世の国絵図事業

幕府による国絵図事業は、計4回行われました。正保国絵図の後には、元禄10年（1697年）から元禄国絵図が作成され、仕様の統一が図られました。さらに、天保6年（1835年）には、幕府主導で編纂された天保国絵図が作成されています。現在、天保国絵図のみが原本として残っています。

関連事項

正保国絵図の作成は、単なる地理情報の収集だけでなく、幕府の支配体制を強化する目的もありました。また、地図作成の過程で地名が変更された例もあり、現在の東京都葛飾区の地名である亀有は、元々「亀無」でしたが、地図作成の際に「亀有」に改められました。

参考資料

川村博忠「明暦大火被災による正保国絵図再提出の時期について」（PDF）『歴史地理学』第55巻第1号、歴史地理学会、2013年、43-51頁。

関連項目

江戸幕府の地図事業
亀有

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