褥瘡

褥瘡（床ずれ）とは

褥瘡（じょくそう）とは、一般的に「床ずれ」と呼ばれる、皮膚やその下の組織が圧迫によって損傷する病気です。医学的には、長期間同じ体勢で寝たきりになっている患者さんの体と、ベッドなどの支持面との接触部分で血行が悪くなり、組織が壊死してしまう状態を指します。

褥瘡の種類

褥瘡は、発生のメカニズムによって大きく2つに分けられます。

偶発性褥瘡：健康な人に一時的な外力が加わってできるもので、原因が取り除かれれば比較的早く治ります。
尋常性褥瘡：慢性的に経過しやすく、治りにくい褥瘡です。特定の要因を持つ患者さんに多く見られます。

ここでは、主に後者の尋常性褥瘡について詳しく解説します。

発生病理

褥瘡は、体の骨が突出している部分（骨性隆起部）の周辺に、圧迫・伸張・摩擦などの外力が加わることで発生します。これらの外力によって組織の微小循環が悪くなり、細胞が壊死し、皮膚の潰瘍へとつながります。

原因

褥瘡の原因は、大きく分けて外的因子と内的因子があります。

外的因子

外的因子とは、体の外から加わる力のことです。具体的には、以下の2つが挙げられます。

圧力：体と支持面との接触部分に垂直にかかる力（体圧）によって、組織が圧迫されて血液の流れが悪くなります。
摩擦・ずれ：体と支持面との間で摩擦やずれが生じると、組織が引っ張られて損傷します。

内的因子

内的因子とは、体の中の状態のことです。以下のような要因があると、褥瘡ができやすくなります。

加齢
低栄養
麻痺
皮膚の乾燥

これらの要因を把握し、適切な対策を講じることが重要です。

検査

褥瘡のリスクを評価するためには、以下の検査が行われます。

血液検査（特に貧血の有無）
血清アルブミン値
血中亜鉛値

これらの検査で低栄養が見つかった場合は、栄養状態の改善が不可欠です。

予防

褥瘡は、適切な予防策を講じることで、発生を大きく減らすことができます。予防の基本は以下の3点です。

1. 除圧・減圧：体にかかる圧力を分散させることが重要です。
体圧分散寝具の使用（メディカルムートン、ウレタンフォームマット、エアマットなど）
定期的な体位変換（2時間ごとが基本、体圧分散寝具を使用する場合は4時間以上も可能）
2. 皮膚の清潔と保湿：皮膚を清潔に保ち、乾燥を防ぐことが大切です。
入浴（または足浴）
保湿剤の使用
3. 栄養管理：バランスの取れた食事で、体の抵抗力を高めることが重要です。
管理栄養士による栄養指導

その他、褥瘡のリスクを評価するためのスケール（ブレーデンスケール、OHスケール、K式スケールなど）も活用されています。

好発部位

褥瘡ができやすい部位は、体位によって異なります。

仰臥位：後頭部、肩甲骨部、肋骨角部、脊柱棘突起部、仙尾・仙腸部、踵骨部
側臥位：側頭部、耳介、肩峰部、肩甲骨部、肋骨角部、腸骨稜部、大転子部、腓骨頭部、内・外踝部
座位・車椅子移乗時：尾骨部、坐骨部

これらの部位を特に注意して観察する必要があります。

評価

褥瘡の重症度を評価するために、DESIGN分類が一般的に使われています。これは、褥瘡の深さ、浸出液の量、大きさ、感染の有無、肉芽組織の状態、壊死組織の有無などを総合的に評価するものです。また、経過を評価するためにDESIGN-Rと呼ばれる評価方法も用いられます。

進行度による分類

褥瘡の深さによる分類には、NPUAP分類（全米褥瘡諮問委員会）が用いられます。

DTI疑い：皮下組織の損傷が疑われる状態。
I度：表皮のみの損傷（発赤、びらん）。
II度：真皮までの損傷（水疱形成、皮膚潰瘍）。
III度：皮下組織までの損傷。
IV度：筋肉や骨まで損傷（骨壊死、骨髄炎、敗血症）。
U：深さの判定が不能な場合。

治療

褥瘡の治療は、創の状態に応じて保存的治療（外用薬、被覆材）や外科手術が行われます。

基本的な治療方針

創部の洗浄：毎日洗浄し、清潔に保つ。
湿潤環境の保持：創面を乾燥させないように、適切な被覆材を使用する。
炎症の除去と血行改善：炎症を抑え、血行を促進する（ただし、マッサージや加熱は禁忌）。
壊死組織の除去：壊死組織を取り除く。
感染対策：感染がある場合は、消毒や抗生剤を使用する。

具体的な治療法

湿潤療法：創面を乾燥させないように、創傷被覆材で保護する。
外用剤：肉芽形成や上皮化を促進する。
外科的治療：ポケット状の損傷や壊死組織の除去が必要な場合。

症例

褥瘡の症例については、医療機関の専門家にご相談ください。

参考文献

『褥瘡予防・管理ガイドライン 2009年版』日本褥瘡学会

関連人物

木林身江子

関連項目

脊髄損傷
湿潤療法
陰圧閉鎖療法
皮膚科学
廃用症候群（生活不活発病）
緑膿菌

外部リンク

日本褥瘡学会ホームページ
褥瘡の管理のホームページ金沢大学医学部保健学科褥創研究会 代表 真田弘美
褥瘡と創傷の管理 金沢大学医薬保健研究域保健学系看護科学領域臨床実践看護学講座 慢性・創傷看護技術学分野
褥瘡に対する新しい考え方と治療
床ずれを一緒に考えるサイト

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