褰帳

褰帳（けんちょう）について

褰帳（けんちょう）とは、日本の伝統的な儀式において重要な役割を果たす女官のことを指します。特に、即位や朝賀などの大礼の際に天皇の座る高御座の帳を開く役割を担い、そのような女性を「褰帳命婦」と呼ぶこともあります。この名称は「褰帳」と「命婦」の合成語であり、特定の儀式に関連する重要な職務であることが示されています。

褰帳の役割と歴史

「内裏式」という儀式には、褰帳命婦の配属についての指示が明記されています。この中には、内親王や三位以上の皇族が褰帳を務めることができるという規定があり、初めは女王二名がその役割を果たしていましたが、後には女王一名と典侍一名が交代で担当するようになりました。特に院政期には、伯家の女王とその乳母である典侍がこの役を担うことが常となり、これが伝統として確立されました。

褰帳の儀式では、まず参加者が着席した後、褰帳命婦が左右に分かれ、それぞれ東西の戸から席に着きます。その後、天皇が高御座に着座すると、執翳女嬬が9人ずつ御前に進み出て翳を奉じ、続いて褰帳命婦が高御座に向かって帳を開くという流れが生まれます。

帳の開き方

褰帳命婦が帳を開く際には、高御座の南側にある一間の帳を開くことになります。その際、女官が内側から支え、端を針で留める作業が行われ、結果として帳が八の字形に広がるのが特徴です。儀式の終了時も同様に、執翳女嬬が翳を奉じた後、帳を再び垂らし、その後天皇が後房に帰るのです。

褰帳の文化的意義

この褰帳の儀式は、天皇の地位を象徴すると同時に、儀礼の厳粛さや格式を保つために不可欠な要素となっています。高御座は日本の伝統的な象徴とされ、その周囲の空間がどのように装飾されているか、またどのように扱われるべきかに関して、褰帳命婦は重要な役割を果たします。

このように、褰帳は日本の古代からの深い歴史と文化を反映しており、今でも特別な儀式において重要な存在であり続けています。褰帳の役割を通じて、時代を超えた価値観や儀礼が受け継がれ、重要な文化的遺産としての位置を占めています。

参考文献

• - 浅井虎夫『新訂 女官通解』、講談社〈講談社学術文庫〉、1985年
• - 角田文衛『日本の後宮』、学燈社、1973年

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