朝賀

朝賀（ちょうが）とは

朝賀は、古代日本の律令制度において、毎年元日の朝に天皇が皇太子以下の文武百官から拝賀を受ける重要な儀式でした。これは「朝拝（ちょうはい/みかどをがみ）」とも呼ばれました。地方においては、国司が郡司らを率いて国衙の政庁で天皇を遥拝し、その後、国司が郡司以下の拝礼を受ける形式がとられました。

起源と変遷

朝賀の起源は中国に遡ります。唐の時代の歴史書『通典』によると、漢の高祖が初めて朝賀の儀式を行ったとされています。日本においては、『日本書紀』によれば、大化2年（646年）に初めて行われたとされています。日本における元日の概念は、中国から暦が伝わって以降に成立したと考えられていますが、それ以前にも1年のサイクルは存在し、その始まりに何らかの儀礼があったと推測されています。朝賀は、中国の儀式と日本古来の年始の行事が組み合わさって形成されたと考えられています。

当初、天皇を4度拝み1度拍手をするという伝統的な作法が見られましたが、平安時代初期には中国風に改められました。大化の改新後、律令国家形成の過程で朝賀は定例化され、元日には天皇と氏族の長である氏上以外への拝礼は禁止されました（養老儀制令では、家政機関の本主も拝礼が認められました）。

『続日本紀』の大宝元年（701年）には、朝賀の詳細な様子が記述されており、この頃に儀礼としてのスタイルが確立したと考えられます。元日の天皇は、四方拝、供御薬、朝賀の順に儀式を執り行いました。平安時代に編纂された『貞観儀式』には、天皇が辰一刻（午前7時頃）に内裏から朝堂院の大極殿に参入する規定が記されています。

庭上の装飾は、大宝元年（701年）から始まり、大納言以上の礼服着用は大宝2年（702年）から開始されました。平安時代初期には、拍手が再拝に改められ、朝賀は即位式とほぼ同様の設営、礼服、式次第で行われるようになりました。朝賀の後には、元日節会が開かれ、翌2日には、皇后や皇太子が朝賀を受ける中宮朝賀や東宮朝賀が行われることもありました。

衰退と変遷

村上天皇の時代以降、朝廷の公事が夜に行われるようになる（夜儀化）と、朝賀も次第に行われなくなりました。村上天皇の天慶10年（947年）の朝賀では、天皇が大極殿に入ったのは午前10時頃でした。一条[[天皇]]の正暦4年（993年）の朝賀では、天皇が午前6時頃に大極殿に入ったにもかかわらず、参加者の遅刻により大幅に開始が遅れるという事態も発生しました。正暦4年を最後に朝賀は行われなくなり、略式の小朝拝がその代わりとなりました。

朝賀は、古代日本の国家儀礼において重要な役割を果たし、天皇の権威を示すとともに、国家の安定と繁栄を祈願する意味を持っていました。その変遷は、律令制度の確立から衰退、そして平安貴族文化の隆盛と衰退を映し出す鏡とも言えるでしょう。

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