西北西 (映画)

『西北西』（せいほくせい）は、2015年に製作された日本映画であり、2018年に日本で一般公開されました。監督・脚本を務めたのは中村拓朗で、本作は彼の2作目の監督作品となります。

映画は、東京を舞台に、3人の女性の交流を描いています。バーテンダーとして働くレズビアンのケイ（韓英恵）、イラン人留学生でムスリムのナイマ（サヘル・ローズ）、そしてケイの恋人でモデルのアイ（山内優花）です。それぞれの女性が抱える不安や葛藤、そして自分自身探しの旅が、繊細に描かれています。

映画のタイトル『西北西』は、東京からメッカへの祈りの方向を示しており、彼女たちの内面的な方向性、そして自分自身を見つける旅路を象徴しています。特にナイマ役にはサヘル・ローズが抜擢されました。中村監督は、ローズの持つ人間性がナイマそのものだと感じ、彼女以外には考えられなかったと語っています。

本作は、企業からの出資を受けずに、中村監督とプロデューサーの自己資金で製作されました。その制作過程にも、独特のこだわりが見られます。例えば、ケイとナイマがカフェで出会うシーンは、事前に打ち合わせすることなく、2人の女優が実際に初対面の状態での撮影が行われました。その自然な演技は、映画にリアリティを与えています。

また、映画にはジャン・ユンカーマンが大学の教授役で出演しており、沖縄戦など歴史に関する授業のシーンも収録されています。この授業シーンは、映画のテーマである多様な視点や理解を象徴する重要な要素となっています。

『西北西』は、2015年10月の釜山国際映画祭を皮切りに、ミュンヘン国際映画祭、レインボー・リール東京、ジャパン・カッツなど、世界各国の映画祭で上映されました。そして2018年9月15日、日本で一般公開され、批評家や観客から高い評価を受けました。

映画批評家のジャスティン・チャンは、『バラエティ』誌で、本作の脚本について、「ケイとナイマが直面する様々な文化的偏見や不安を探り、絶え間なく変化していく様子を描いている」と高く評価し、特にケイがナイマが用意したイラン料理を慎重に口にするシーンを「もっとも甘美で自然なシーンの一つ」と絶賛しています。このシーンは、寛容と相互理解への到達方法を示唆する、重要な描写となっています。

キャストには、韓英恵、サヘル・ローズ、山内優花らが出演。スタッフには、中村拓朗（監督・脚本）、汐田海平、郝青、韓愈（プロデューサー）、關根靖享（撮影）、中里正幸（音楽）などが名を連ねています。主題歌は、hakobuneの「Kazahana」です。

『西北西』は、マイノリティの女性たちの葛藤と交流を通して、現代社会における多様性と共存について問いかける、深く感動的な作品と言えるでしょう。自己資金による制作、国際的な上映、そして高い評価など、その軌跡もまた、映画の魅力の一つとなっています。

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