西山登志雄

西山 登志雄

「カバ園長」の愛称で広く知られた西山登志雄（にしやま としお）は、東武動物公園の創設に携わり、初代園長を務めた人物です。1929年（昭和4年）8月3日に東京都で生を受け、2006年（平成18年）10月9日に77歳でその生涯を閉じました。長年にわたる動物たちとの関わりの中で、特にカバとの間に築いた深い信頼関係は、多くの人々に感動を与えました。

略歴と「カバ園長」誕生

終戦直後の1946年（昭和21年）、西山氏は上野動物園に入園し、動物飼育の道を歩み始めました。約20年間、動物たちの世話をする中で、特にカバの担当として活躍します。カバの口を大きく開けさせるなど、彼ならではの特技は、来園した子供たちの人気を集め、「カバのおじさん」として親しまれるきっかけとなりました。昭和40年代には、東京12チャンネル（現在のテレビ東京）で放送された動物番組『動物の国』に三代目「動物おじさん」として出演し、お茶の間にもその顔が知られるようになります。また、週刊少年ジャンプに連載された漫画『ぼくの動物園日記』や、フジテレビのスペシャルアニメ『カバ園長の動物園日記』の主人公のモデルとしても知られています。

1981年（昭和56年）には、埼玉県に新たに開園した東武動物公園の初代園長に迎えられます。動物との距離を縮める展示方法などを積極的に取り入れ、公園の基礎を築きました。2000年（平成12年）に園長職を退いた後も名誉園長として公園に関わり続けましたが、体調を崩し、2005年（平成17年）3月に名誉園長も退任し、療養生活を送っていました。2006年10月9日、肺炎のため埼玉県春日部市の病院で永眠しました。

印象的なエピソード

西山氏は幼い頃から動物が好きだったといいます。その熱意は、後に珍しい動物の発見にも繋がりました。上野動物園に勤める前、友人から「50センチメートルくらいのネズミがいる」と聞き、半信半疑ながら捕獲を試みたところ、それがヌートリアでした。これは、毛皮のために南米から持ち込まれたものが野生化したもので、西山氏が捕獲した個体が日本国内で帰化が確認された最初の例とされています。この功績から、西山氏の名前が発見者として記載されている書籍も存在します。

東武動物公園における彼の功績として特筆すべきは、「ふれあいコーナー」の設置です。開園当初から「ふれあい」をテーマに西山氏が考案し設置されたこのコーナーは、動物と来園者が直接触れ合うことを可能にし、その後の日本の多くの動物園に影響を与える先駆けとなりました。

私生活においても、動物への愛情は揺るぎませんでした。妻とは見合いで結婚しましたが、結婚の唯一の条件として「動物が好きであること」を提示したといいます。妻は当初、動物といえば犬や猫をイメージしていたため条件を承諾しましたが、結婚後は自宅にバク、カンガルー、チンパンジー、ウサギなど様々な動物たちがいる賑やかな生活を送ることになります。妻はチンパンジーのおむつを替えたり、生まれたばかりの長男と同時期にいた子犬に自分の母乳を与えたりと、西山氏の動物愛を全面的に支えました。

「カバ園長」として知られた西山氏ですが、実はカバは見た目に反して非常に神経質で気性の荒い動物です。テレビ出演時の映像には、西山氏がカバに触れたり、口の中の餌を取り除いたりする様子が残されていますが、これはカバが西山氏に対して絶大な信頼を寄せていたからこそ可能だった特別な関係性を示すものです。

その他の活動と影響

かつては、彼の似顔絵が入った「カバ園長」ブランドのソフトドリンクが東武ストアなどで販売されるなど、キャラクターとしても親しまれました。また、彼の没後、長崎バイオパークの職員である伊藤雅男氏が「（2代目）カバ園長」と称されるなど、その名と功績は受け継がれています。西山氏は動物に関する著作も多数発表しており、多くの人々に動物の世界の魅力や命の大切さを伝え続けを伝え続けました。

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