西岸寺 (京都市伏見区下油掛町)

西岸寺は、京都市伏見区下油掛町に位置する浄土宗の寺院です。同じ伏見区内に所在する浄土真宗本願寺派の西岸寺とは異なる寺院であり、「油懸地蔵」の名で広く親しまれています。油懸山地蔵院と号します。

歴史

寺伝によれば、天正18年（1590年）に僧雲海によって開基されました。慶応4年（1868年）の鳥羽・伏見の戦いでは、周辺が戦火に見舞われる中、地蔵堂のみが奇跡的に焼失を免れました。この事実は、地域住民にとって心の支えとなっています。

地蔵石仏

本尊として祀られているのは、鎌倉時代に遡るとみられる石造りの地蔵立像です。この地蔵には、油を注ぎながら祈願すると願いが叶うという信仰が根強く、長年にわたって油が注がれてきた結果、像の表面は独特の黒光りを放っています。この光沢は、人々の信仰心の深さを物語っています。

芭蕉句碑

地蔵堂の北側には、松尾芭蕉の句碑がひっそりと佇んでいます。碑には「我衣(わがきぬ)に ふしみの桃の しづくせよ」という句が刻まれています。この句は、貞享年間に芭蕉が西岸寺を訪れ、同門と伝えられる僧任口と交流した際に詠まれたものとされています。芭蕉が伏見の地で感じた風情が、この短い句に凝縮されています。

アクセス

西岸寺へのアクセスは、京阪本線中書島駅から徒歩約7分です。駅からの道順も分かりやすく、気軽に立ち寄ることができます。

参考文献

竹村俊則 『昭和京都名所図会 洛南』駸々堂、1986
山本真嗣・ 水野克比古 『京・伏見歴史の旅(新版)』山川出版社、2003
京都府歴史遺産研究会 『京都府の歴史散歩(中)』山川出版社、2011

関連項目

日本の寺院一覧
油掛通

外部リンク

京都観光Navi：西岸寺（油懸地蔵）

西岸寺は、歴史と信仰が息づく場所であり、訪れる人々に心の安らぎを与えてくれるでしょう。伏見を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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