西川仁右衛門

西川仁右衛門（にしかわ にえもん）は、16世紀後半から17世紀前半にかけて活躍した近江商人です。1549年に近江国蒲生郡南津田村（現在の滋賀県近江八幡市南津田町）で生まれ、大工の家に育ちました。しかし、仁右衛門は家業を継がず、1566年に商いの道へ進み、蚊帳の販売を始めました。この年を西川産業では創業の年としています。

1583年、羽柴秀吉の命により田中吉政が八幡山城の築城に着手した際、仁右衛門はその工事の工務監督に任命されたと伝えられています。さらに、1585年には秀吉の甥である羽柴秀次の命により、安土城下町の町民や商人が八幡山下町に移住を開始し、西川家も南津田村から八幡山下町に移りました。この時、仁右衛門は「八幡ぼり」の輸出入調査役を務めています。

1587年、仁右衛門は八幡山下町に山形屋を開店し、本格的に商業活動を展開しました。1595年に秀次が自害したことで八幡山城は廃城となりますが、この頃から近江商人が各地で商売を成功させたと言われています。1596年には、4人の息子を連れて能登国門前町へ蚊帳を売りに行き、帰路には海産物を仕入れて八幡で卸売りを行いました。この商いは1602年頃まで続いたとされています。

1600年の関ヶ原の戦いの後、徳川家康が八幡山下町を訪れた際、八幡の商人は徳川家康に兵糧を支援したとされています。これは、八幡の基礎を築いた田中吉政や京極高次が東軍に属していたことが背景にあると考えられます。1603年には、長男の市左衛門を能登に残し、自身は美濃方面へ販路を広げ、蚊帳だけでなく畳表も取り扱うようになりました。さらに尾張、三河、遠江にも進出し、商いの幅を広げていきました。

1615年、江戸幕府の許可を得て、江戸日本橋通りに出店を開き、近江屋作右衛門（後に、近江屋作兵衛）と称しました。1628年には、家督を四男の甚五郎に譲り、隠居生活に入ります。1644年3月16日、仁右衛門は生涯を閉じました。

仁右衛門の家族構成としては、兄弟に木屋右兵衛がおり、妻は南津田村の藤木宗右衛門の娘です。五人の息子に恵まれ、長男の市右衛門は能登国門前町に住み、三代当主利助の父となりました。次男の弥兵衛は嶋屋弥兵衛の始祖、三男の久右衛門は永原町分家を興し、四男の甚五郎は二代当主を継ぎました。五男の七郎兵衛は釘抜屋又七郎家の始祖となりました。

また、童門冬二の小説『近江商人魂 蒲生氏郷と西野仁右衛門』では、副主人公として「西野」という名前で登場しています。この小説を通して、仁右衛門の商人としての生き様を知ることができます。

西川仁右衛門は、その生涯を通して近江商人としての才覚を発揮し、西川家の発展に大きく貢献しました。彼の足跡は、現代においても多くの人々に影響を与え続けています。

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