八幡山城

八幡山城（近江八幡城）

八幡山城は、滋賀県近江八幡市宮内町周辺、八幡山（標高283m）に築かれた山城です。羽柴秀次（豊臣秀次）の居城として知られ、別名、近江八幡城とも呼ばれています。

概要

近江八幡駅から北西へ約2.5km、八幡山の南半分に位置します。山城として急峻な地形を活かし、築城当時は東西に内湖、南に城下町を配した安土城と似た構造でした。城下町は安土城から移されたもので、一部は日牟禮八幡宮境内地や八幡堀とともに、重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。八幡堀は琵琶湖の水を引き、戦闘だけでなく運河としても機能しました。埋め立て計画もありましたが、住民運動により保存され、現在は時代劇の撮影にも使われる名所となっています。
2017年には続日本100名城に選定されました。

沿革

1582年の本能寺の変後、豊臣秀吉の天下となる中で、秀次は1585年に近江八幡43万石を与えられ、安土城の隣接地に八幡山城を築城、安土城の建物や城下町を移築しました。
秀吉は八幡山城を近江の国城として重視し、自ら普請を指揮。山頂の城郭、麓の居館、城下町の建設に力を注ぎました。八幡山は安土山と異なり険しいため、麓の居館が中心となり、桐紋の金箔瓦などが出土しています。

秀吉は秀次の宿老に田中吉政を、その他、中村一氏、山内一豊、堀尾吉晴、一柳直末らを配し、近江を軍事的、経済的要衝として万全な体制を築きました。

秀次は18歳で入城後、1590年に尾張国清洲城へ移封。京極高次が2万8千石で入城しますが、1595年の秀次事件で秀次が切腹すると、八幡山城は築城から10年で廃城となり、高次は大津城へ移りました。

本丸跡には、秀次の母である日秀尼（智）が開基した村雲御所瑞龍寺が1963年に移築されています。

城郭

城跡は山頂部の山城と、谷筋に配置された居館の2つから構成されます。山城と居館を分離する構造は戦国期の城郭に多く見られますが、近世城郭では珍しい形です。これは築城時が小牧・長久手の戦いの後であり、徳川家康との関係が不安定であったため、八幡山城が防衛線として機能したことに起因します。

1967年には集中豪雨による土砂崩れが発生し、近江八幡市が発掘調査を行っています。

山城

山城部分は総石垣造りで、本丸、二の丸、北の丸、西の丸、出丸が放射状に配置され、高石垣で構築されています。1963年に移築された瑞龍寺の門が本丸虎口となっています。事前の発掘調査では、建物礎石や瓦などの遺物が多数検出され、五輪塔や宝篋印塔などの流用礎石も用いられており、短期間での築城が推測されます。

本丸と西の丸に接する西北隅には天守台があり、天守がそびえていたと考えられています。本丸西側の石垣は台風で崩壊し、現在はコンクリートで補強されています。

本丸の虎口は内枡形となっており、二の丸への動線には横矢がかかる仕掛けが施され、防御性を高めています。二の丸には八幡山ロープウェーの駅と展望館があります。

各曲輪の石垣の隅は算木積みで、加工された石材が使われています。隅以外の石垣は粗割石や自然石が積まれており、本丸の石垣は比較的大きな石材を使用しています。本丸を取り巻く帯曲輪は、各曲輪へのバイパスとして機能します。西の丸、北の丸の地表面には建物礎石跡があり、建物が存在したと考えられています。大手は不明ですが、ロープウェー駅付近の石垣が大きく崩れており、この付近にあった可能性があります。

石垣の石材は、約4km南の岩倉山から運ばれたとされています。

秀次居館

八幡山城の特徴は、山城とは別に築かれた南山麓の居館部分です。標高約130mの地点から雛壇状に曲輪が配置され、最上部には秀次居館跡があります。巨大な内枡形の食い違い虎口があり、西側には二段、東側には四段の高石垣が構えられています。石垣の隅は算木積みで、一部には鏡石積みが用いられています。居館曲輪は東西300m×南北100m以上の広さがあり、発掘調査から盛り土によって造成されたことが判明しました。下部の家臣屋敷曲輪については、史料が残っていないため不明な点が多く、近世の改変も受けています。居館曲輪からは大型の礎石建物跡や金箔瓦が出土しており、書院造の御殿があったと推定されています。居館には一直線に伸びる大手道があり、安土城の2倍にあたる約270mの距離があります。

山城部分と居館部分は共に、総石垣作り、礎石立ち建物、瓦葺き建物など近世的な構造を持っています。縄張り構造や石垣技法から、山城の方が新しいとの指摘があり、京極高次による改修の可能性も考えられています。

城下町

城下町は、安土城の城下町の町民を移住させ、近隣の町村からも移住を促して形成されました。町並みは横筋4通り、縦筋12通りを中心に碁盤目状に作られ、商業振興を重視した平和的な政策がとられました。東から二筋を職人の居住区、三筋目から西へを商人とした構成で、町名も安土城下町との共通点が多く見られます。

安土城同様、中世の特権商人組織であった座、市を外し八幡楽市楽座とし、1586年に掟書を発布。八幡楽市楽座令は安土楽市楽座令と酷似しており、歴史的条件や権力の違いによる差異が見られます。この政策が近江商人の発展の基礎を築きました。

八幡堀

八幡堀は琵琶湖から引いたもので、八幡町の外を巡り、八幡山の麓を囲んでいます。秀次居館や武家屋敷を配置し、防御と同時に運河として重視されました。長さ6kmに及ぶ八幡掘は、廃城後も明治時代、大正時代まで商工業の動脈として機能しました。琵琶湖から直接舟入できるようにし、秀次時代には往来する舟は八幡に立ち寄らなければならない決まりとしました。八幡浦は回船業を営むことができる親浦の一つで、物流の拠点でしたが、北前船の開設により衰退しました。

城跡へのアクセス

電車: JR東海道本線（琵琶湖線）および近江鉄道八日市線（万葉あかね線）近江八幡駅から近江鉄道バス（長命寺行き）で八幡堀（大杉町）八幡山ロープウェー口停留所下車、徒歩5分→八幡山ロープウェー
車: 名神高速道路竜王IC→国道477号→滋賀県道2号大津能登川長浜線→八幡山ロープウェー

* 八幡公園に無料駐車場あり。

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