西川杏太郎

西川杏太郎（にしかわ きょうたろう）は、1929年3月9日に東京で生まれ、2023年2月24日に93歳で亡くなった日本の美術史研究者です。専門は日本彫刻史と文化財保存学であり、この分野で数々の業績を残しました。書家で昭和の三筆の一人である西川寧を父に持ち、芸術に対する深い理解と造詣の中で育ちました。

西川は、1950年に慶應義塾大学文学部文学科（芸術学専攻）を卒業後、翌年には文化財保護委員会（現在の文化庁）に入庁し、文化財保護の分野でキャリアをスタートさせました。文化財保護部美術工芸課長、文化財調査官といった要職を歴任し、文化財保護行政の中枢で活躍しました。その後、東京国立博物館次長を経て、1987年4月には奈良国立博物館館長に就任し、古都奈良の文化財の保存と研究に尽力しました。1991年には東京国立文化財研究所の所長に就任し、文化財の研究においても重要な役割を果たしました。

退官後は、横浜美術短期大学の学長を務め、後進の育成にも力を注ぎました。さらに、神奈川県立歴史博物館の館長も務め、地域文化の振興にも貢献しました。これらの活動を通じて、西川は文化財の保護と美術史研究の発展に大きく貢献しました。

西川の著書には、『奈良の寺13 興福寺北円堂と南円堂の諸像』、『日本の美術202 一木造と寄木造』、『日本彫刻史論叢』、『文化財五十年をあゆむ』などがあります。また、『国宝大事典2 彫刻』を編著するなど、その研究成果は多岐にわたります。

これらの著書を通じて、西川は日本彫刻史における重要なテーマを深く掘り下げ、その専門知識と研究成果を広く社会に共有しました。特に、仏像の構造や技法に関する研究は、美術史研究に大きな影響を与えました。

西川の功績は、その学術的な貢献だけでなく、文化財保護行政におけるリーダーシップにも及びます。文化財保護委員会の時代から文化庁に至るまで、文化財の保存と活用に関する政策立案に携わり、日本の文化遺産を守り、次世代に伝えるための基盤を築きました。

2002年11月には、長年の文化財保護と美術史研究への貢献が認められ、勲二等瑞宝章を受章しました。これは、西川の業績が社会的に高く評価された証です。

西川杏太郎は、その生涯を通じて、日本美術史研究と文化財保護に情熱を注ぎ、多くの人々に深い影響を与えました。その功績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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