西方寺 (長野県木曽町)

西方寺（さいほうじ）は、長野県木曽郡木曽町福島に位置する浄土真宗本願寺派の寺院です。この寺院は、その歴史の中で幾度かの移転を経験しており、その背景には水害との闘いがありました。

歴史

西方寺の起源は、かつて同じ上之段町にあった善性寺という寺院に遡ります。善性寺は天和年間（1681～1684年）に廃寺となりましたが、その門徒であった桜井教西や寺沢教信らの熱心な働きかけにより、貞享2年（1685年）4月に順應を迎え、西方寺が開山されました。当初、寺は八沢橋から約200m上流の八沢川左岸に位置していました。

しかし、宝暦3年（1753年）8月17日、八沢川の氾濫により本堂の下半分が流失し、建物が北側に傾いてしまうという大きな被害を受けました。その後、門徒たちの尽力により、9月中旬には本堂が起こされ、宝暦4年（1754年）には隣接する上田氏の土地を譲り受けて境内地を拡張、本堂を曳いて修復するという大工事が行われました。これにより、寺は一時的に再建を果たしました。

さらに、嘉永元年（1848年）6月6日には再び八沢川が氾濫し、本堂の東北隅から庫裏の東北隅半分が流出するという甚大な被害に見舞われました。この度重なる水害を受け、安政2年（1855年）11月、寺は現在の場所に移転することを決意しました。現在の地は、かつて木曽代官の山村蘇門の家老であった石作駒石の屋敷があった場所で、その宅地が庫裏として活用され、駒石の書斎「翠山樓」はそのまま離れ座敷として残されました。

明治17年（1884年）には、またしても八沢川の氾濫により庫裏が流出してしまいます。現在の庫裏の座敷は、奇跡的に残った「翠山樓」を移築したもので、間口三間半、奥行三間の広さを持ち、玄関と茶の間が付属しています。床下は約五尺の寄棟造で、元々は東向きに建てられていました。部屋は六畳と四畳の二室から成り、西側には一尺五寸の床の間が設けられています。東南北の三面には障子が設けられ、その外側には三尺の縁と高欄が巡らされています。また、外桁は特に高く設置され、雨戸の丈は七尺となっています。

このように西方寺は、度重なる自然災害に見舞われながらも、その都度人々の手によって再建されてきました。この寺の歴史は、地域の人々の信仰心と強い絆を示すものであり、その精神は今日まで受け継がれています。

参考文献

『木曽福島町史 第1巻 (歴史編)』　第五章　江戸時代　第十二節 神社・佛閣・社堂　六、西方寺　p839～p843　木曽福島町教育委員会　1982年
『探訪・信州の古寺　＜第Ⅱ巻　浄土教・日蓮宗＞』　中信編　西方寺　p242　郷土出版社　1996年

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