西村清雄

西村 清雄（にしむら すがお）

日本の教育者、キリスト教徒。幕末から明治にかけての松山を代表する歌人、西村清臣を祖父に、道後温泉本館の建設を主導した伊佐庭如矢を叔父に持つ家系に、1871年（明治4年）、伊予松山藩士の長男として現在の愛媛県松山市に生まれた。

少年時代には地元の中学校に入学するも、翌年には廃校となる経験をする。この頃、カトリック教会にて洗礼を受けキリスト教信仰を持つに至った。その後、大阪へ出て英語を学び、そこで大阪基督教会の牧師であった宮川経輝の影響を受け、プロテスタントの信仰へと導かれた。

1890年（明治23年）に故郷である松山へ戻り、松山教会の一員となった。ここでアメリカ合衆国から派遣された宣教師コーネリア・ジャドソン（ジャジソン）と出会い、彼女が開設を目指していた夜間学校の設立に協力する。そして1890年（明治23年）11月、働きながら学ぶ青年たちのための「普通夜学会」が開校された。西村は開校から間もない1892年（明治25年）、21歳という若さでこの学校の初代校長に就任する。学校は1894年（明治27年）に「松山夜学校」と改称され、現在の松山学院高等学校へと繋がっている。

西村は、この夜学校の運営を通じて、昼間は働きながら勉学に励む勤労青年たちへの教育と、キリスト教の精神に基づく伝道に生涯を捧げた。質実剛健を旨とした教育方針で、多くの若者を育成した。

教育活動と並行して、キリスト教賛美歌の創作も行った。1903年（明治36年）に作詞した賛美歌「山路こえて」は、当時編纂された『讃美歌』（明治版）に採用され、日本人によって作られた賛美歌の代表的な古典として、長く多くの人々に歌い継がれている。この賛美歌が生まれたとされる法華津峠には、後年（1952年）にその功績を称える歌碑が建立されている。

第二次世界大戦後には、松山東雲中学校・高等学校の校長を務めるなど、教育界での活動を続けた。1953年（昭和28年）に教育の現場から退いた後も、その功績は高く評価された。愛媛県教育文化賞などを受賞し、1962年（昭和37年）には松山市から名誉市民の称号が贈られている。

西村清雄は、教育者として、またキリスト教徒として、地元松山の青年教育と信仰普及に貢献し、さらに「山路こえて」という不朽の賛美歌を残した人物として、その名を刻んでいる。1964年（昭和39年）12月25日に93歳でその生涯を閉じた。

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