西武安比奈線

幻の鉄路、安比奈線の歴史と現在

安比奈線は、埼玉県川越市の南大塚駅から安比奈駅へと延びていた、かつての西武鉄道の貨物線です。1925年に開業し、入間川で採取された砂利の輸送を担っていましたが、1963年以降は休止状態となり、2017年に正式に廃止されました。

開業から休止へ

安比奈線は、入間川の砂利を運搬する目的で「砂利線」として開業しました。しかし、関東大震災後の復興需要の減少や、砂利採取の規制強化により、その役割は徐々に縮小。1963年以降は休止という形になりました。

幻の車両基地計画

1980年代には、西武新宿線の輸送力増強のため、安比奈駅に新たな車両基地を建設する計画が持ち上がりました。地元説明会も開催され、通勤路線化の話も出るほどでしたが、少子高齢化による需要予測の下方修正により、1995年に計画は無期延期、そして中止となりました。

川越市は、その後も安比奈線の旅客線化と新駅設置を要望し続けましたが、西武鉄道は2016年に安比奈車両基地の整備計画を正式に廃止。南入曽車両基地の増強や玉川上水車両基地の新設により、安比奈に新たな基地を設ける必要がなくなったことが理由でした。

廃止、そして現在

車両基地計画の廃止に伴い、安比奈線も復活することなく、2017年5月31日に廃止されました。休止時点では、国道16号と交差する箇所のみが第1種踏切で、その他は警報機や遮断機がない第4種踏切という状況でした。

廃止後も線路や架線柱は残されていましたが、老朽化が進み、線路への立ち入りを防ぐ柵が設けられました。2006年には、西武鉄道の前身である川越鉄道の開業記念イベントとして、安比奈線を歩くイベントが開催されました。

メディアへの登場

安比奈線は、NHKの連続テレビ小説『つばさ』のオープニングシーンにも登場しました。ロケ地は遊歩道として開放され、撮影で使用されたトロッコも展示されました。

廃止後の跡地利用

廃止後の跡地利用については、川越市と関係機関が協議を重ねていますが、現時点では未定です。2017年から2018年にかけて架線柱の撤去作業が行われましたが、レールや枕木、橋桁は残されています。

路線データ

路線距離：3.2 km
軌間：1067 mm
駅数：2駅
電化区間：全線（直流1500 V）
複線区間：なし（全線単線）
閉塞方式：なし（無閉塞運転）

安比奈線は、短い路線ながらも、地域の歴史と開発の夢を乗せて走った鉄路でした。その痕跡は今も残り、訪れる人に往時の面影を伝えています。

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