西沙諸島

西沙諸島：南シナ海の要衝

西沙諸島（パラセル諸島、ホアンサ諸島）は、ベトナム東方約240キロメートル、中国海南島南東約300キロメートルに位置する、大小約50のサンゴ礁の島と岩礁からなる群島です。この海域は、古くから戦略的な要衝として認識されており、現在では中華人民共和国が全島を実効支配しています。しかし、ベトナムと台湾（中華民国）もこの諸島の領有権を主張しており、国際的な紛争の火種となっています。

歴史的背景

1909年、清朝は西沙諸島の調査を実施しましたが、資源発見には至らず、開発は進みませんでした。その後、中華民国やフランスが領有を試みるも、日本が1938年に編入を閣議決定。第二次世界大戦後、日本はサンフランシスコ講和条約で西沙諸島に関する権利を放棄しました。これにより、西沙諸島の領有権を巡る問題が複雑化しました。

現代の紛争

1956年以降、中華人民共和国は東部のアンフィトリテ諸島を、南ベトナムは西部のクレスセント諸島の一部を占領しました。ベトナム戦争中の1974年、中国人民解放軍はクレスセント諸島に侵攻し、南ベトナム軍を排除して西沙諸島全体を占領しました（西沙諸島の戦い）。その後、南北ベトナムが統一されてベトナム社会主義共和国が成立しましたが、西沙諸島の返還は行われず、現在に至るまで中国が実効支配を続けています。

地理と戦略的重要性

西沙諸島は小さな島々で構成されており、民間人はほとんど居住していません。しかし、中国は広大な排他的経済水域（EEZ）を主張しており、漁業資源や海底資源の確保、そして南シナ海における軍事的な要衝としての価値を重視しています。

近年、中国は多くの島々に港湾や施設を建設し、特に最大の島であるウッディー島（永興島）には軍民両用の滑走路や映画館などの施設を建設し、支配を強化しています。また、2012年には、西沙諸島周辺海域を監視するシステムを構築し、実効支配を強固なものとしています。

国際的な緊張

2016年、常設仲裁裁判所は中国が主張する「九段線」に法的根拠がないとの判断を下しましたが、中国はこれを無視しています。アメリカ海軍は、南シナ海における航行の自由作戦を実施し、西沙諸島周辺を航行することで中国を牽制しています。また、中国がウッディー島に地対空ミサイルを配備したことや、旅客定期航空便を開設したことなど、中国の支配強化に対する国際社会の懸念は高まっています。

主な島嶼

西沙諸島は、大きくアンフィトリテ諸島（宣徳環礁）とクレスセント諸島（永楽環礁）に分けられます。主な島には、以下のようなものがあります。

アンフィトリテ諸島 (宣德環礁)
ウッディー島（永興島）：西沙諸島最大の島で、空港や軍事施設が建設されています。
石島：ウッディー島の北東に位置し、埋め立てにより繋がっています。
ツリー島（趙述島）
ノース島
クレスセント諸島 (永楽環礁)
琛航島
金銀島
* トリトン島（中建島）：ヘリポートが建設され、滑走路が建設中です。

上陸と観光

中国国民は、海南島からのフェリーツアーで西沙諸島に上陸することができます。このツアーは中国人のみが対象で、3泊4日の日程で複数の島を訪れます。しかし、外国人の参加は許可されていません。

領有権をめぐる批判

2013年、当時の台湾総統李登輝は、中国の西沙諸島など周辺海域での行動を「成金」と批判しました。これは、中国が経済力を背景に、周辺国の領土を侵犯しているという認識を示したものです。

西沙諸島は、その戦略的重要性と領有権を巡る複雑な歴史から、今後も南シナ海における国際的な緊張の焦点であり続けるでしょう。

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