九段線

九段線とは

九段線（きゅうだんせん、英語: Nine-dash Line）とは、南シナ海における中国の領有権主張の根拠となる、地図上に引かれた破線です。この線は、スプラトリー諸島（南沙群島）やパラセル諸島（西沙群島）などの島々の領有権、および周辺海域の権益を主張するために使用されています。断続する9つの線で構成されており、中国が一方的に主張しているため、周辺諸国との間で深刻な対立を引き起こしています。

九段線の位置

九段線は、以下の海域を囲むように引かれています。

バシー海峡
北ルソン島トラフ
マニラ海溝
スプラトリー諸島とフィリピンの間
パラワントラフ
スプラトリー諸島とマレーシアの間
スプラトリー諸島とインドネシア領ナトゥナ諸島の間
スプラトリー諸島とベトナムの間
* パラセル諸島とベトナムの間

この線は広範囲に及んでおり、南シナ海の大部分を中国の主張する範囲に含めています。

歴史

九段線の起源は、1947年に中華民国が主張した「十一段線」に遡ります。第二次世界大戦後、中華民国は南シナ海の島嶼の領有権を主張し、11本の線で囲まれた海域を領土として主張しました。1949年に中華人民共和国が成立した後、1953年にこの十一段線からトンキン湾付近の2つの線が削除され、現在の九段線となりました。この変更は、当時のベトナム戦争における北ベトナムへの支援を考慮した、中国の安全保障政策によるものでした。

中華民国（台湾）は、当初十一段線の立場を継続していましたが、2016年以降は国際法を重視する姿勢に転換し、主権問題には慎重な立場を取るようになりました。

中華人民共和国の主張

中国は九段線に基づき、南シナ海における広範な権益を主張しています。具体的には、以下の4つの解釈がなされています。

1. 島嶼帰属の線: 線内の島嶼および周辺海域は中国に属し、中国が管轄・統制する。
2. 歴史的な権利の範囲: 線内の島、礁、浅瀬、砂洲は中国領土であり、内水以外の海域は排他的経済[[水域]]と大陸棚となる。
3. 歴史的な水域線: 線内の島嶼および周辺海域の歴史的権利を有し、線内の全ての海域が中国の歴史的な水域となる。
4. 伝統疆界線（国境線）: 線内の島嶼および周辺海域は中国に属し、線外の区域は公海または他国に属する。

これらの主張は、周辺国との間で領有権争いを激化させる要因となっています。

権利争議と国際的な反応

九段線を巡る権利争議は、南シナ海における緊張を高めています。中国の主張に対し、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイなどが異議を唱え、国連海洋法条約に基づいて自国の権利を主張しています。これらの国々は、九段線を一方的な主張として認めていません。

2016年には、フィリピンが常設仲裁裁判所に中国の主張の違法性を訴え、裁判所は中国の主張に法的根拠がないとの判断を下しました。しかし、中国はこれを認めず、南シナ海での活動を継続しています。また、2024年には、中国とフィリピンの船舶が南シナ海で衝突し、国際的な懸念が高まっています。

さらに、アメリカ合衆国をはじめとする国際社会も、中国の南シナ海での活動に対して懸念を表明しており、航行の自由作戦などを実施しています。周辺諸国は中国に対し、国際法を遵守するよう求めていますが、現状は依然として緊張状態が続いています。

各国の反応

中国のパスポートに九段線が印刷されていることに対し、周辺諸国は強く反発しています。例えば、ベトナムやフィリピンは査証欄へのスタンプ捺印を拒否し、インドは中国側の地図上にインド領を示すスタンプを押すなど、対抗措置を取っています。また、インドネシアは九段線を認めず、国連海洋法条約の遵守を求めています。アメリカ合衆国も中国の主張を「完全に違法」と非難し、南シナ海を自国の海洋帝国として扱うことを認めないとしています。

まとめ

九段線は、南シナ海における中国の領有権主張の根幹となるものです。しかし、その法的根拠は国際的に認められておらず、周辺諸国との間で深刻な対立を引き起こしています。この問題は、南シナ海の平和と安定を脅かすだけでなく、国際的な法の支配に対する挑戦とも言えるでしょう。今後の動向が注視されるところです。

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