西郷札

西郷札とは

西郷札（さいごうさつ）は、1877年（明治10年）の西南戦争において、西郷隆盛率いる薩摩軍（西郷軍）が戦費を調達するために発行した紙幣です。日本で初めての軍用手票（軍票）として紹介されることもありますが、反政府軍が発行した紙幣であるため、厳密には軍票とは異なるという指摘もあります。

発行の背景

西南戦争における薩摩軍の戦費は、当時の金額で70万円から100万円とも言われています。戦費調達のため、当初は大山綱良が官金15万円を用意し、士族商社である承恵社や撫育社が発行した証券（承恵社札）を富商に売却して6万円を調達しました。また、警察費として住民から納金させることでも賄いました。承恵社札には五円、一円、半円の3種類があったとされますが、五円券は現存が確認されておらず、一円と半円の2種類のみが現存しています。

しかし、戦費不足が深刻化したため、桐野利秋らの発案により西郷札が発行されることになりました。発行期間は1877年7月7日から同31日にかけてで、総発行高は17万円とされています。ただし、発行期間については6月から8月とする資料や、発行高を14万1,420円とする資料もあり、正確な情報は分かっていません。

西郷札の特徴

西郷札は、和紙原料の入手が困難だったため、和紙の表裏に布（寒冷紗）を貼り合わせて作られました。また、耐水性のある黒漆のインクを使用し、黄楊の木版で印刷されています。券種は6種類で、それぞれ拾円（濃茶）、五円（葡萄鼠）、壱円（勝色）、五拾銭（桃色）、弐拾銭（黄色）、拾銭（生壁色）とされています。これらの情報は『薩南血涙史』に記録されています。

戦争と西郷札

薩摩軍の紙幣は、戦況の悪化とともに信用が低下しました。そのため、宮崎地方などでは脅迫によって通用させた例も見られました。西南戦争後、明治政府により西郷札の使用は厳禁とされました。市中に出回った西郷札に対する補償は行われなかったため、特に戦場となった地域では経済が大混乱に陥りました。一方で、「承恵社札」は翌1878年6月に発行元の両社と貸主との間で示談が成立し、償還されました。

西郷札の影響とその後

西郷札は、西郷隆盛への追慕の情などから庶民の間ではお守りとして珍重されました。大阪では西郷札の所有権を巡って裁判が起きたこともあります。西郷の没後50年にあたる1927年には、「南洲翁五拾年祭記念」として西郷札の記念レプリカが発行されました。このレプリカには紙製と布製の2種類があります。

また、小説家の松本清張は、西郷札をテーマとした短編小説『西郷札』を執筆しており、西郷札は文学作品の題材にもなっています。

まとめ

西郷札は、西南戦争という激動の時代に生まれた特殊な紙幣であり、その発行背景や特徴、そして戦後の人々の感情が込められた歴史的な遺物と言えるでしょう。

参考資料

西郷札の歴史を伝える宮崎市広瀬小学校区協議会ホームページ
上記ページの2007年9月30日におけるアーカイブ - ウェイバックマシン

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