西鉄ライオンズの歌

プロ野球の歴史において、かつて福岡を本拠地とした西鉄ライオンズの公式球団歌として知られるのが「西鉄ライオンズの歌」である。この歌は、日本の著名な作詞家であるサトウハチロー氏が言葉を紡ぎ、国民的歌手としても知られる藤山一郎氏が曲を手がけ、1951年に世に送り出された。

この球団歌は、球団の誕生という歴史的な出来事を記念して制作された。プロ野球が2リーグに分裂した後の1950年にそれぞれ誕生した、パシフィック・リーグの西鉄クリッパースとセントラル・リーグの西日本パイレーツは、いずれも福岡市を本拠地としていたが、1951年に両球団が合併し、新たに「西鉄ライオンズ」として船出したのである。この新球団の誕生に際し、戦前にプロ野球チーム「ライオン軍」の冠スポンサーを務めていたライオン歯磨株式会社が、記念として楽曲を提供したのが本楽曲である。発表会は、1951年7月29日に大阪球場で行われた。

作詞を担当したサトウハチロー氏は、合併前の西鉄クリッパースが1年間のみ使用した「西鉄野球団歌」にも携わっており、西鉄ライオンズの歌はそれに続く起用となった。歌詞の大きな特徴として、1番で「九州全土」、3番で「阿蘇のけむり」「筑紫の海」「薩摩日向の草木」といった具体的な地名や風景が織り交ぜられている点が挙げられる。これは、福岡から鹿児島に至るまで、九州全域を活動範囲とする西鉄が、この地域で唯一のプロ野球チームとなったことを強く意識した内容であり、当時の球団社長であった木村重吉氏の提案を反映したものとされている。

特に広く知られている歌声は、1958年に球団が日本シリーズ3連覇という偉業を達成した際の中心選手たち、例えば「神様、仏様、稲尾様」と称された稲尾和久氏や、「怪童」中西太氏、「安打製造機」豊田泰光氏らが、同シーズンの開幕前に録音したものである。これは、前年の日本シリーズ優勝を記念して行われたもので、福岡市渡辺通にあったRKB毎日放送のラジオAスタジオで公開レコーディングという形で行われた。この録音では、豊田泰光氏が2番をソロで歌唱しており、ビクターレコードから製造されたSP盤（規格品番：PR1435）の盤面には、「ライオンズ選手全員」とは別に豊田氏の名前が単独でクレジットされていることからも、その特別な扱いがうかがえる。このSP盤のB面には、詩人の持田勝穂氏が作詞し、福岡学芸大学教授（当時）の森脇憲三氏が作曲、RKB合唱団が歌唱した「ライオンズをたたえる歌」が収録されている。

その後、球団の経営母体が変更されるにつれて、球団歌も代替わりしていった。西日本鉄道が1972年シーズンをもって球団経営から撤退し、太平洋クラブライオンズ（福岡野球株式会社）へと名称が変わった際には、球団歌は西郷輝彦氏が歌う「君こそライオンズ」に変更された。この歌は、クラウンライターライオンズ時代を含め、1978年まで使用された。そして、球団が埼玉県へと本拠地を移した1979年以降は、現在も使用されている「地平を駈ける獅子を見た」（歌唱：松崎しげる氏）が新たな球団歌として制定されている。

「西鉄ライオンズの歌」は、球団歌としての役目を終えた後も、ファンや球団史の中で語り継がれている。近年では、2011年と2012年に開催された復刻イベント「ライオンズ・クラシック」において、現在の本拠地である西武ドームで7回裏の攻撃前に流され、往年のファンを喜ばせた。また、2016年には九州朝日放送（KBC）が制作・発売したDVD『栄光の西鉄ライオンズ』（KBCDVD16-1）に、この「西鉄ライオンズの歌」と、B面曲であった「ライオンズをたたえる歌」のオリジナル音源を用いたミュージックビデオが収録されるなど、現在でもその音源に触れる機会が提供されている。

関連事項として、1978年に発表された、ライオンズの低迷を憂えるファンを描いた作品「甦れ! 俺の西鉄ライオンズ」は、その後の埼玉移転決定と結びつけられ、移転反対の心情を代弁するものとも受け取られた。また、この「西鉄ライオンズの歌」と同様に、作詞をサトウハチロー氏、作曲を藤山一郎氏が手がけた球団歌として、同時期に活動していた阪急ブレーブスの応援歌が存在する点も興味深い。

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