西鉄323形電車

西鉄323形電車の概要と歴史

西鉄323形電車は、かつて西日本鉄道が運営していた北方線で活躍していた路面電車です。この電車は、バスの車体技術を取り入れた軽量な構造が特徴で、丸みを帯びたデザインや独特の外見が目を引きます。ここでは、323形の運用やその後の譲渡、保存に至るまでの経歴を詳しく紹介します。

1. 北方線における運用

北方線は、元々馬車鉄道として開通し、その後1920年に電化されました。当初は小型の2軸車が主力でしたが、第二次世界大戦後は乗客数が急増し、その需要に応えるために321形という大型ボギー車が投入されました。しかし、321形以降は新たな電車の増備が進まず、経営の不安定さも影響しました。

1950年代以降、沿線の開発が進む中で、老朽化した2軸車の置き換えが必要とされ、新たなボギー車両の導入が決まりました。その結果、323形が生まれることになります。323形は、当時他の路面電車のコスト削減を意識した軽量車体を持っており、321形と同等の性能を持ちながらも、約5トン軽量化されました。また、狭い道路幅に適した丸みを帯びた「たまご型」のデザインが施され、側面にはコルゲート加工がなされていました。

さらに、323形の台車には中古品が再利用されたため、製造コストの削減が実現しました。営業運転は1956年から始まりましたが、増備は連接車の331形に移行し、323形は製造初年度の2両のみとなりました。集電装置は当初ビューゲルであったものの、晩年にはパンタグラフに交換されました。しかし、北方線はワンマン運転を実施せず、323形もその対応工事が行われることなく1980年に廃止されました。

2. 譲渡とその後の運用

北方線の廃止後、323形のうちの1両（324）は、高知県の土佐電気鉄道へ譲渡され、300形301として新たに営業運転を開始しました。譲渡時には最低限の塗装変更が行われましたが、ワンマン運転には対応せず、手動扉のまま運用されました。結果として、324は主にイベント用車両としての役割を担うことになります。

1985年からは「カラオケ電車」としてイベントに使用され、夏の間は「ビアホール電車」としての運行も行いました。内部は応接室風に改造され、座布団を置くなど使い勝手を考慮した工夫がされました。その後も改造が進められましたが、324の特徴的な外装は維持されました。

しかし、2007年には新たなイベント用車両が導入されたことで運用が終了し、その後は廃車となりました。324はその後、土佐電気鉄道の桟橋車庫で留置されていましたが、2008年に北九州線車両保存会に引き渡され、修復作業が行われました。

3. 保存状況

2012年からは香椎花園にて静態保存されていましたが、2021年12月に閉園となり、その後は筑前山家駅前に移動されました。2022年には北九州線車両保存会のヤードに移動し、保存が続けられています。もう一両である323も、廃止後に保存されていたものの2019年に解体され、現在では324のみが北方線に存在した路面電車の中で唯一現存する車両となっています。

まとめ

西鉄323形電車は、独自の外見を持ち、その運用や譲渡、保存の歴史を通じて多くの鉄道ファンの関心を集めてきました。今後もその歴史が語り継がれ、多くの人々に愛され続けることでしょう。

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