西雅雄

西雅雄について

西雅雄（にし まさお、1896年4月24日 - 1944年4月16日）は、岡山県勝田郡梶並村（現：美作市）出身の日本の政治活動家で、特に経済学の宇野学派において重要な役割を果たしました。彼は経済学者の宇野弘蔵や大学教授の高木益郎から高く評価され、その活動は多くの人々を共産党員へと導きました。

生涯の概要

西は、岡山県で生まれ、旧制岡山県立高梁中学（現在の高梁高等学校）に進学しました。彼の同級生には後に東京帝国大学教授となる宇野弘蔵や、関西大学法学部教授の高木益郎などがおり、彼らとの交流が不遇の時代の文献を通じた思想的刺激となりました。特に宇野は西を「忘れえぬ級友」と称し、彼の影響を受けていきました。

西は、第一次共産党に参加した後、ボルシェヴィズムに身を投じました。彼は若い頃から文学的な素養を持ち、宇野に文学や社会・政治論の世界を紹介することで、友人の思想的成長をも促しました。ある修学旅行の際、時間を共にした汽車の中で、大杉栄や荒畑寒村が発行した『近代思想』などの文献について語り合ったことは、宇野の人生観を大きく変えるきっかけとなったのです。

彼は高梁中学を卒業後、すぐに兄がいる朝鮮に渡り、江原道の春川で約1年間役所に勤務しました。岡山と朝鮮を行き来する中で、彼と宇野の間に交わされた手紙は、西の文学的情熱がどのように社会主義への関心へと変わっていったかを示しています。西は早稲田文学誌を読んでおり、早稲田大学からの誘いを断ったことは、彼の県外での活動を決意させました。

東京に転居後は秀英舎で文選工を務め、1921年には「社会主義研究」の編集主任に就任します。そして1922年に日本共産党に加入し、機関誌『マルクス主義』の編集者として活動を行いました。その後、南満州鉄道に勤務し、1942年には満鉄調査部事件で逮捕され、最終的には獄死という不遇の運命を辿りました。

著作と業績

西雅雄はその生涯において多くの著作を残しました。代表的なものには、1924年に発表された『英国労働党発達史』や、1927年の『階級闘争史概論』、さらに『最近における階級諸運動』（1933年）などが挙げられます。これらの著作は、社会主義や共産主義に関連する重要な視点を提供し、当時の労働運動や階級意識を理解するための貴重な資料ともなっています。

また、彼は翻訳者としても活躍し、マルクスやエンゲルスの著作を日本語に翻訳しました。『マルクスの生涯と学説』や『資本主義経済の没落』、さらにはレーニンやブハーリンの作品についても、多くの翻訳を手掛けました。彼の翻訳によって、当時の日本におけるマルクス主義の理解は深まったといえるでしょう。

西雅雄の人生は、文学と政治、経済学が交錯する中で、多くの人々に影響を与え、後の時代に受け継がれる思想の基礎を築いたのです。彼の業績は、単なる歴史的な出来事を超え、現在の社会運動や哲学に対して深い示唆を与えるものとなっています。

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