覚醒工房

覚醒工房は、1981年に福井哲哉によって発足した日本のインディーズレーベルです。前身である「覚醒派レコード」から、実験精神に満ちた活動を展開しました。1980年代後半には活動を停止しましたが、その存在は日本のインディーズシーンに大きな影響を与えました。

覚醒派レコードから覚醒工房へ

当初、「覚醒派レコード」としてスタートしたこのレーベルは、主宰者である福井哲哉自身や、彼が参加するバンドのアルバムをリリースしていました。しかし、単なるレコード制作に留まらず、リトグラフやエッチングといった美術的な要素を重視し、レコードが付属品として扱われるような、アート作品としての側面を強く押し出していました。これらの作品は、個展の際に画廊で販売されるなど、既存の音楽流通の枠にとらわれない販売方法も試みられました。

また、覚醒工房は、西宮の「かげろうレコード」や京都の「ゼロレコード」といった、当時のインディーズシーンを牽引していたレーベルと提携し、東京でのプロモーション活動を支援しました。この時期、福井哲哉は音楽雑誌やミニコミ誌でライターやデザイナーとしても活動し、多角的な視点からインディーズシーンを盛り上げていました。

1984年、実験[[音楽]]、音響系、ノイズ系のアーティストの作品を海外に発信するという明確な目的のもと、コンピレーション・アルバム『א（アレフ）』が企画され、そのためのサブレーベルとして「覚醒工房」が誕生しました。以降、日本のアーティストを海外へ、海外のアーティストを日本へ紹介することをレーベルの軸とし、数多くのコンピレーション作品を制作。レーベル名も「覚醒工房」へと改められました。

これらのコンピレーション作品には、単なる音楽データだけでなく、詳細なデータとアートワークが掲載されたブックレットが付属しており、作品の世界観をより深く理解できるよう工夫されていました。

実験的な試みと多様な表現

「覚醒工房」は、福井哲哉の音楽ユニットとしても活動し、発表されたコンピレーション・アルバムには、彼ら自身の作品も収録されています。ファックスやワープロといった当時の最新技術を駆使した、実験的なインダストリアル・ノイズミュージックは、聴く者に新たな刺激を与えました。

1986年以降は、音楽作品だけでなく、ビデオアート作品集『ヴィデオ・アレフ』やアーティストブックなど、音楽以外の表現にも力を入れるようになります。しかし、1987年のコンピレーション作品『ミラーズ・オン・ザ・ランディング』を最後に、音楽作品の発表は途絶えました。

覚醒工房は、短い活動期間ながらも、日本のインディーズシーンに独自の足跡を残しました。実験精神に満ちた音楽作品、美術的な要素を取り入れた作品づくり、そして海外との交流を通じて、新たな音楽の可能性を追求したその姿勢は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

主要作品

『א』中ザワヒデキ、Merzbow 他
『SEPTEMBER '84』 K2(草深公秀)、Merzbow 他
『OCTOBER '84』 Seiei Jack、四本淑三、島田英明 他
『Roll Angle 1984』 Robert C. Morgan、The Bisexual Lovers 他
『Mutsuki / Kisaragi』 Mosque Of Torment、T. Kamada 他
『Blood Stone '85』 古館徹夫、The Joke Project(Seiei Jack) 他
『Gash Of April / May I Dream?』 Nicola Frangione、遺産相続人 他
『6月某日、外は雨。』 Brett Kerby、Lawrence Crane 他
『鏡の秘密』 死転合、Art School 他
『物質の記憶』 Art Interface、Nasty Joke(四本淑三) with Tetsuya Fukui 他

もう一度検索