観世元章

観世元章 - 江戸時代中期の猿楽師

観世元章（かんぜ もとあきら）は、享保7年（1722年）から安永2年1月18日（1774年2月28日）まで生きた、江戸時代中期の著名なシテ方の猿楽師である。彼は観世流の十五世宗家であり、観世左近とも称される。彼の功績は、特に謡曲の詞章に関する改訂に見ることができ、彼の名は日本の古典芸能の歴史に深く刻まれている。

元章は、宗家十四世である織部清親の子供として生まれ、初めての名は清温であった。その後、通称として三十郎や左近を名乗るようになった。彼は国学を愛し、考証にも熱心であった。田安宗武、賀茂真淵、加藤枝直といった知識人たちと共に「明和の改正」と称される謡曲の詞章の大改訂に取り組み、その成果として『明和改正謡本』が刊行された。しかし、この改訂は周囲からの評価が低く、彼の死後数ヵ月でその多くは廃れた。それでも、元章の手が加えた新曲や舞台上の演出に関する改訂が後世に受け継がれ、今も観世流の中で生き続けている。「梅」という作品は、観世流の現在の代表曲として知られている。

また、元章は十代将軍徳川家治の若い頃から能楽の指南を行っており、その功績が認められて1752年（宝暦2年）には分家が認められ、彼の弟である観世織部清尚に別家を設立させることとなった。この分家の認可は、四座一流に次ぐ高い地位をもたらし、幕府の演能に参加する資格を得ることに繋がった。さらに、宗家伝来の面や装束も彼に分与され、これが後に観世銕之亟家となる。

現在に至るまで、観世流の中で「分家」という場合には、主に銕之亟家を指すことが一般的である。

観世元章の業績は、彼の代から脈々と受け継がれ、江戸時代の能楽界における重要な転換点となった。彼の改訂した詞章や新しい演出は、後の世代にも影響を与え続け、現代の能楽の発展に寄与している。彼の名前は今も観世流と共にあり、その足跡を辿ることで、多くの芸術家たちは日本の伝統芸能の深さを理解し、守り続けることに貢献している。

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