観世左近

観世左近の歴史とその名の由来

観世左近は、日本の伝統芸能である能楽のシテ方に属する観世流の重要な名称です。特に、観世流の宗家がこの名を名乗ることが多く、中世から現代にかけてその伝統が受け継がれています。特に19世紀以降の観世元滋は、この名の著名な持ち主として知られ、今日でも多くの人々に記憶されています。

左近の起源

「左近」という名は、観世流の7世宗家である観世宗節が初めて名乗ったとする誤伝が存在しますが、実際にはその甥で後継者の8世宗家、観世元尚が1574年に始めてこの名を使い始めました。それまでの「観世大夫」という名に代わって「観世左近」という署名を用いるようになったのです。この名の選定は、彼の宗家としての地位を強調するものであったと考えられています。

徳川家との関係

9世宗家・観世身愛は、早くから徳川家康から支援を受けており、1601年頃には「観世左近大夫」を名乗るようになりました。この名は、もともと従五位下の左近将監を指すものであり、身愛がこの称号を用いることで他の能楽師たちに対して自らの地位を誇示したとされています。特に世阿弥が用いた「左衛門大夫」という称号に影響を受けた可能性が高いと考えられています。

代々の名乗りの変遷

その後も、観世流の宗家は「左近大夫」を引き続き使用しますが、12世宗家・観世重賢は「左門」を名乗ることになりました。これは、宝生家からの養子であった重賢が観世家の伝統を遠慮したためとされています。

一方で、15世宗家の観世元章は「左近」を復活させ、さらに18世宗家の清充や21世宗家の清長もこの称号を名乗りました。幕末から明治にかけての22世宗家・観世清孝は、江戸時代には「左近」を使用していなかったものの、特定の時期に限りこの名を名乗った形跡が残っています。

現代の観世左近

大正から昭和の時代には、24世宗家の観世元滋が1927年に「観世左近」を襲名し、後の25世宗家の観世元正も同様に「観世左近」を名乗ることになりました。元正は戸籍上もこの名前に改めましたが、1990年にその生涯を閉じています。

歴代「観世左近」の一覧

• - 7世 - 観世元忠
• - 8世 - 観世左近元尚
• - 9世 - 観世左近大夫身愛
• - 10世 - 観世左近大夫重成
• - 11世 - 観世左近大夫重清
• - 15世 - 観世左近元章
• - 18世 - 観世左近清充
• - 21世 - 観世左近清長
• - 22世 - 観世左近（清孝）
• - 24世 - 観世左近（元滋）
• - 25世 - 観世左近（元正）

観世左近の名は、観世流の重要な地位を示すものであり、その歴史は日本の能楽の中でも特に重要な要素を担っています。

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