観世重賢

観世重賢（かんぜ しげかた）

観世重賢は、江戸時代に活躍した猿楽の名手で、観世家の12世大夫として知られています。彼は1658年に生まれ、1746年に亡くなるまでの間、能楽の発展に寄与しました。重賢は初め三郎次郎として知られ、その後左門と呼ばれるようになり、隠居後には服部周雪と名乗りました。

生い立ちと養子としての道

重賢は、宝生家の大夫・宝生重友の次男として誕生しました。重友は能楽界での大きな業績を積み重ね、将軍である徳川家綱からも褒美を受けた歴史的な人物です。兄はのちに宝生大夫となった九郎友春、弟は俳人として名を馳せた宝生（服部）沾圃です。

観世家は、当時の能役者たちが仕える五座の一つであり、観世重清が１１世の大夫として君臨していた時期に、重賢は7歳で養子として迎え入れられました。重賢は1663年に重清の後を継ぐ伝承者として任命され、江戸城での表能に初めて参加しました。

能楽界での躍進

1682年、重賢は12世観世大夫の地位を継承し、早くからその名声を広めていきました。特に1680年、徳川綱吉の将軍宣下祝賀能において、重賢が重い役を務めたことが評価され、彼は観世家の代表者として名を高めました。この時、その才能は多くの人々に認識されていました。

しかし、1685年に養子久馬助が綱吉によって士分として登用されると、重賢は養子を迎え入れるなど後のために手を打つことにしました。時が経つにつれ、観世家はさまざまな混乱に直面することになります。

幻の隠居生活

重賢は29歳の若さで隠居を決意し、観世大夫の地位を織部に譲りました。この年に病を患っていたことも理由に挙げられますが、彼はその後、京の観世屋敷で生活を送り始めました。隠居後は服部十郎左衛門と名乗り、遊興に没頭したとの記録があります。

重賢は京での生活の中で京観世の関係者と交流を持ち、多くの影響を与えました。特に、彼は多くの後継者を育成しただけでなく、観世流の謡本の刊行にも関与しました。彼が手を入れた「正徳弥生本」などは今日でも注目されています。

晩年と再出発

重賢は50歳を過ぎて芸道に再び真剣に取り組むことを決意しました。彼は江戸に戻り、服部周雪と名乗るようになります。彼は将軍に招かれ、江戸城で「葛城」を舞うなど、再び公の舞台に立つことができました。

晩年には、毎年正月に祝言小謡を創作し、その作品は「周雪作小謡集」として整理されました。彼はまた弟子への指導を行い、将来世代にも大きな影響を与えました。1746年4月23日、重賢は89年の生涯を全うしました。彼の努力と情熱は、後の能楽界において高く評価され続けています。また、彼の遺族も能楽界で名を成していくことになります。

家族について

観世重賢には数人の子がいましたが、長男の三郎次郎は観世大夫として活躍し、津軽藩に仕官しました。次男や三男もそれぞれ狂言師や観世座の名跡を継承しました。重賢の妻に関する記録は残されていませんが、重賢が亡くなる年の初めに彼女も亡くなっていたことが確認されています。彼の生涯は、江戸時代の能楽とその後の発展に大きな影響を与えたことは間違いありません。

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