観光列車 (ポルカ)

ヨハン・シュトラウス2世 ポルカ『観光列車』Op.281

ヨハン・シュトラウス2世が作曲したポルカ・シュネル（速いポルカ）である『観光列車』Op.281は、1864年1月19日にレドゥテンザールで開催された「産業協会舞踏会」のために作曲されました。1938年には、ショスタコーヴィチがオーケストレーションを膨らませた編曲版も発表されています。

作曲の背景

この作品は、オーストリア帝国の地方を走る観光列車、オーストリア南部鉄道の開通式からインスピレーションを受けています。当時、鉄道は新しい時代の象徴であり、その開通は人々に希望と興奮をもたらしました。シュトラウス2世は、その高揚感を音楽で表現しようと試みたのです。

鉄道を題材とした音楽は、それ以前にも存在しました。ハンス・クリスチャン・ロンビはギャロップ『コペンハーゲンの蒸気機関車』を、シュトラウス1世はワルツ『鉄道の愉しみ』Op.89を作曲しています。また、シュトラウス2世の弟エドゥアルトもポルカ・シュネル『テープは切られた』Op.45を作曲し、新線の開通を祝っています。

音楽の特徴

『観光列車』は、鉄道を題材とした音楽の中でも、特に描写的な作品として知られています。トライアングルが列車の発着ベルを、ホルンが列車の進行を暗示するなど、楽器の音色を効果的に使用することで、鉄道旅行の情景を鮮やかに描き出しています。中間部では、オーケストラが緩やかな旋律を奏で、鉄道旅行の楽しさを表現しています。

この作品の特徴として、頻繁な転調が挙げられます。しかし、終結部では高音部の和音によって主調が強調され、力強い太鼓の連打とファンファーレによって、華々しく締めくくられます。

シュトラウスと鉄道

シュトラウス兄弟の作品には、旅行や移動手段をテーマにしたものが多く見られます。しかし、意外なことに、シュトラウス2世自身は旅行好きではなかったようです。ゼメリング峠の絶壁を登ると聞いただけで怖がったり、ボストンへの演奏旅行で鉄道を使うのを嫌がったりしたというエピソードが残っています。妻ヘンリエッタ・トレフツの記録によると、彼は「列車に乗って再びアメリカ旅行をするくらいなら、殺された方がましだ」とまで言ったそうです。これらの逸話は、あくまで余談に過ぎませんが、シュトラウス2世が鉄道旅行に対して苦手意識を持っていたことを示唆しています。

参考資料

若宮由美「ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート2016 エドゥアルト・シュトラウス没後100年を祝して 曲目解説」より〈観光列車〉
『観光列車』の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)
ヨハン･ シュトラウス2世 観光列車 op. 281 (1864) - ウィーン・ヨハン・シュトラウス管弦楽団（WJSO）による解説
ヨハン・シュトラウスⅡ世の音楽 - 関西シティフィルハーモニー交響楽団

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