観音ネギ

観音ネギ：広島のソウルフードを支えるネギ

広島市西区観音地区で栽培されている観音ネギは、その独特の風味と柔らかさで地元の人々に愛され、広島料理に欠かせない存在となっています。単に「ネギ」と呼ぶだけでは片付けられない、広島を代表する農産物と言えるでしょう。

観音ネギの特徴

観音ネギの栽培は、2月から7月にかけて種を播き、6月から翌年1月にかけて収穫されます。収穫時の草丈は約80センチメートルに達し、一般的な葉ネギと比較して白い部分の割合がやや多いのが特徴です。その食感は非常に柔らかく、特有の香り、甘み、そして風味豊かな味わいが魅力です。

その歴史は古く、明治中期に九条ネギの種が広島にもたらされたことに始まります。その後、長年に渡る選抜と改良を経て、良質な分けつ、高い耐寒性と耐病性を兼ね備えた観音ネギが誕生しました。現在でも、系統維持のための品種改良や栽培方法の改善が続けられています。ただし、採種と選抜は各農家が行っているため、栽培者によって若干の特性差が見られるのも観音ネギの特徴と言えるでしょう。

昭和30年代には、九州や四国といったネギの大産地との激しい産地間競争がありました。しかし、観音ネギは高い品質と独自の流通システムによってこの競争を勝ち抜き、今日までその地位を確立しています。

地元出身の女優である真矢みきさんは、自身の幼少期について「観音ネギのネギ畑のすぐそばで4歳まで育った」と語っており、観音ネギが地元の人々の生活に深く根付いている様子が伺えます。

観音ネギの用途

観音ネギは、その柔らかさと風味の良さから、様々な料理に使用されます。すき焼きや鍋物など、和食の定番料理との相性は抜群です。また、広島風お好み焼きやネギ焼きといった、広島の代表的な料理にも欠かせない食材です。特に、お好み焼きにおいては、その独特の風味と食感が、全体の味わいを引き立てています。かつて人気テレビ番組『どっちの料理ショー』でも頻繁に登場し、その美味しさが広く知られるきっかけとなりました。

観音ネギの歴史と未来

明治時代からの歴史を持つ観音ネギは、地元農家の努力と工夫によって守り育てられてきました。これからも、その伝統と品質を維持しつつ、新たな魅力を発掘し、更なる発展を遂げていくことが期待されます。広島の食文化を支える重要な存在として、観音ネギの未来に注目が集まります。

参考文献

* タキイ種苗（株）出版部 編『都道府県別 地方野菜大全』（2版）農山漁村文化協会、2003年。ISBN 9784540021565。

もう一度検索