角南隆

角南隆

日本の建築家、角南隆（すなみ たかし、1887年 - 1980年）は、大正後期から昭和期にかけて、神社建築の分野で中心的な役割を担いました。内務省や神祇院において技術官僚として勤務し、多数の神社建築の設計や行政を指導しました。伝統的な形式に機能性や合理性を取り入れた設計思想は、近代における日本の神社建築に影響を与えています。

経歴

岡山県に生まれた角南は、東京帝国大学工科大学建築学科で学び、1915年（大正4年）に卒業。卒業後は建設中の明治神宮造営局で技師として働き始め、外苑の競技場設計などに携わりました。

1919年（大正8年）に内務省技師となり神社局に勤務。同年にはアメリカへホテル建築の視察に出かけました。内務省、そして後の神祇院では、神社建築に関する政策や設計指導の中心的な立場を担い、1939年（昭和14年）には神社局造営課長、翌年には神祇院の造営部門の責任者となりました。戦前・戦中期を通じて、国内外の多くの神社建築に関与しました。

終戦後、国家神道が廃止されると、1946年（昭和21年）に官職を退き、日本建築工芸設計事務所を設立。戦災で被害を受けた各地の神社の復興や、日本の伝統建築技術の粋である伊勢神宮の式年遷宮にも尽力するなど、建築家としての活動を続けました。

神社建築の特徴

明治以降の神社建築には「制限図」という設計基準があり、本殿と拝殿の間に中門を設ける形式が主流でした。角南はこの形式を批判し、大正後期以降、本殿・幣殿・拝殿を一体とした社殿を数多く計画しました。この一体型社殿には、機能性を考慮した工夫が見られます。

大規模な神社では、神職用と参拝者用の二つの拝殿を設ける「内外両拝殿の制」を採用することがあり、これも角南の構想によると考えられています。戦後に再建された明治神宮も、中門を廃し、内外両拝殿を備えています。

多数の参列者が見込まれる護国神社については、祭典の便を考慮し、左右に翼舎を持つ拝殿と、その手前に広場を設ける配置を考案しました。こうした社殿は広場と連携し、儀式時も平時も調和するべきだと彼は考えました。

戦前は行政官として多忙だったため、個別の詳細設計に関与する例は少なかったとされますが、戦後の明治神宮復興では詳細なスケッチを作成するなど、設計への深い関与も見られます。

主な作品

角南が関与した神社建築は多岐にわたります。

光丘文庫（1925年）
吉野神宮（1932年）
橿原神宮増改築（1940年）
平安神宮増築（1941年）
高見神社（1942年）
近江神宮（1944年）
濃飛護國神社再建（1959年）
湊川神社復興（1952年）
祐徳稲荷神社（1957年）
明治神宮復興（1958年）
日枝神社復興（1958年）

受賞・栄典

紀元二千六百年祝典記念章（1940年）
満州帝国建国神廟創建記念章（1941年）
紫綬褒章（1961年）
勲三等旭日中綬章（1966年）

著作

建築や神社に関する論文・書籍を多数執筆しています。

『アメリカの風景と庭園を觀て』（1920年）
『ホテル論』（1921年）
『神社の設備に就て』（1924年）
『社寺建築』（アルス建築大講座、1930年）
『社寺建築』（高等建築学、1934年）
『神社の建築樣式』（1937年）
『神社の防火防空施設』（1944年）

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